インドネシア人を雇用する際に注意するべきポイント

外国人労働者 2023.08.11

インドネシア人を雇用する際に注意するべきポイント

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日本と友好関係を結ぶインドネシアからは、毎年多くの留学生や技能実習生が訪れています。特定技能制度が創設され、就労可能な職種が増えてからはインドネシア人を積極的に雇う企業もみられるようになりました。

しかし、インドネシア人を雇用する場合は、労働市場情報システム(IPKOL)や海外労働者管理サービスシステム (SISKOTKLN)などのシステムを通じた手続きが必要です。また、ムスリムが多いインドネシアとの価値観の違いにも配慮しなければなりません。この記事では、インドネシア人を雇用する際の注意点をわかりやすく解説します。

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日本で働くインドネシア人が増えている理由

そもそも、なぜ日本で働くインドネシア人が増えているのでしょうか。理由は大きく分けて3つあると考えられます。

  • 在留資格が緩和され、就労可能な職種が増えた
  • 日本ならではの文化や自然を楽しめる
  • インドネシアよりも給与水準が高い

上記の中でも大きな理由の一つとしてあるのが、特定技能制度の設立によって在留資格が緩和され、特定産業分野(12分野)での就労が新たに認められた点です。

これまで単純労働として扱われ、日本国内での就労が認められなかった職種も受け入れが可能になりました。[注1]

  • 介護
  • ビルクリーニング
  • 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  • 建設
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備
  • 航空
  • 宿泊
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業

日本食や伝統工芸、美しい自然など、日本が育んできた文化を直接楽しめるという点も、日本で働く理由の一つです。また給与水準がインドネシアより高く、キャリアアップが期待できる点も、インドネシア人が日本での就労を目指す要因となっています。

[注1] 国際人材協力機構.「在留資格「特定技能」とは」

インドネシア人を雇用する際の5つの注意点

ここからは日本企業が実際にインドネシア人を雇用する際の注意点を大きく5つに分けて紹介します。

  • 日本で働く場合は在留資格の取得が必要
  • 現地採用の場合はIPKOLでの手続きが必要
  • 在日インドネシア人を雇用する場合はSISKOTKLNでの手続きが必要
  • インドネシアに進出する場合はインドネシア語の雇用契約書が必要
  • ムスリムが多いため、イスラム教の風習への配慮が必要

主に来日するための在留資格の取得や、インドネシア政府から求められたIPKOLやSISKOTKLNへの登録など、手続きに関する注意点がほとんどです。またインドネシア人はムスリムが多いため、イスラム教に特有の風習にも配慮する必要があります。

日本で働く場合は在留資格の取得が必要

インドネシア人に限らず、外国人労働者を受け入れる場合は出入国在留管理庁(入国管理局)で手続きを行い、在留資格を取得する必要があります。

就労可能な在留資格の例として、技能実習や特別技能などが挙げられます。その他、留学生の場合は資格外活動として一定の範囲での就労が認められます。

在留資格ごとに対象者や在留期間が異なるため、出入国在留管理庁のホームページの在留資格一覧表を確認しておきましょう。[注2]

主な在留資格

該当例

在留期間

高度専門職

1号

ポイント制による高度人材

5年

高度専門職

2号

無期限

経営・管理

企業などの経営や管理者

5年、3年、1年、7ヵ月、4ヵ月または3ヵ月

法律・会計業務

弁護士、公認会計士など

5年、3年、1年または3ヵ月

医療

医師、歯科医師、看護師

5年、3年、1年または3ヵ月

研究

政府関係機関や私企業などの研究者

5年、3年、1年または3ヵ月

教育

中学校や高等学校などの語学教師

5年、3年、1年または3ヵ月

技術・人文知識・国際業務

機械工学などの技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者

5年、3年、1年または3ヵ月

企業内転勤

外国の事業所からの転勤者

5年、3年、1年または3ヵ月

介護

介護福祉士

5年、3年、1年または3ヵ月

興行

俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手など

3年、1年、6ヵ月、3ヵ月または15日

技能

外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機の操縦者、貴金属等の加工職人など

5年、3年、1年または3ヵ月

特定技能

1号

特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を要する技能を要する業務に従事する外国人

1年、6ヵ月または4ヵ月

特定技能

2号

特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人

3年、1年または6ヵ月

技能実習

1号

技能実習生

法務大臣が個々に指定する期間(1年を超えない範囲)

技能実習

2号

法務大臣が個々に指定する期間(2年を超えない範囲)

技能実習

3号

法務大臣が個々に指定する期間(2年を超えない範囲)

例えば、IT関連の資格を持ったプログラマーや、単純労働に従事しないホテルマンなどは、技術・人文知識・国際業務の在留資格で就労できる場合があります。

また就労に必要な在留資格を取得するための手続きには、以下の2種類があります。なお、すでに就労ビザを取得したインドネシア人の中途採用の場合、新たに在留資格を申請するのではなく、「所属機関等に関する届出手続」が必要です。

  • インドネシアで現地採用を行い、出入国在留管理庁で在留資格認定証明書交付申請を行う
  • 就労ビザを持たないインドネシア人(留学生など)に対し、出入国在留管理庁で在留資格変更許可申請を行う

[注2] 出入国在留管理庁.「在留資格一覧表」

現地採用の場合はIPKOLでの手続きが必要

インドネシア国籍の人を特定技能外国人として受け入れる場合、通常の在留資格変更許可申請に加えて、インドネシア政府が管理する労働市場情報システム(IPKOL)での手続きが必要です。[注3]

IPKOLへの登録は受け入れ企業だけでなく、特定技能外国人として来日するインドネシア人側も実施します。なお、IPKOLへの求人情報の掲載に手数料はかかりません。

IPKOLでの手続きはオンラインで実施することもできるので、活用するのがおすすめです。

インドネシアで現地採用を行う場合の手続きの流れは以下の通りです。

IPKOLへの登録作業など、インドネシア側で行われる手続きに不安がある場合は、駐日インドネシア共和国大使館に問い合わせましょう。

  1. 受け入れ企業がIPKOLに登録し、求人情報を掲載する
  2. インドネシア人労働者とマッチングした場合、相手方と雇用契約を締結する
  3. 受け入れ企業が在留資格認定証明書の交付申請を行う
  4. インドネシア人労働者がSISKOTKLNへの登録を行う
  5. インドネシア人労働者が必要書類を提出し、ビザの発給申請を行う
  6. インドネシア人労働者が移住労働者証を取得し、SISKOTKLNに登録する
  7. インドネシア人労働者の入国時に上陸審査が行われ、在留資格が付与される

[注3] 法務省「~特定技能外国人の受入機関の方々へ~インドネシア国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ」

在日インドネシア人を雇用する場合はSISKOTKLNでの手続きが必要

留学生として入国しているなどの在日インドネシア人を雇用する場合は、手続きの流れが異なります。

例えば、在日インドネシア人を特定技能外国人として受け入れる場合、企業側は在留資格変更許可申請を行う必要があります。

具体的な手続きの流れは以下の通りです。インドネシア人を現地採用する場合と違って、受け入れ企業側はIPKOLでの手続きが不要です。

  1. 受け入れ企業と在日インドネシア人とで雇用契約を締結する
  2. 在日インドネシア人がSISKOTKLNへの登録手続きを行う
  3. 移住労働者証(E=KTKLN)が発行され、在日インドネシア人が駐日インドネシア大使館で海外労働者登録を行う
  4. 受け入れ企業が在留資格変更許可申請を行う

企業がインドネシアに進出する場合はインドネシア語の雇用契約書が必要

企業がインドネシアに進出し、現地のインドネシア人と雇用契約を締結する場合、インドネシア語の雇用契約書を作成する必要があります。作成する際には以下の点に注意するようにしましょう。[注4]

  • 期間を定めた雇用契約は書面により作成し、インドネシア語で、アルファベットを用いて作成する。
  • 上記に述べる規定に反して、口頭で作成された期間を定めた雇用契約は、期間を定めない雇用契約として認める。
  • 雇用契約がインドネシア語と外国語で作成され、後日、2つの言語の間に解釈の相違が生じた場合は、インドネシア語で作成された規定を有効とする。

もし日本語や英語などの外国語で雇用契約書を作成した場合、雇用期間の定めに関わらず、無期雇用契約として扱われます。また、インドネシア語とそれ以外の言語で雇用契約書を1部ずつ作成し、それぞれに解釈の不一致が生じた場合は、インドネシア語の規定が優先されます。

 

[注4] 国際労働財団「労働に関する法律」.

ムスリムが多いため、イスラム教の風習への配慮が必要

ここまで、主に手続き面の注意点を解説しました。インドネシア人を雇用するときのもう一つの注意点は、日本人との宗教的な違いです。

宗教

人口分布

イスラム教

86.69%

キリスト教

10.72%

ヒンズー教

1.74%

仏教

0.77%

儒教

0.03%

その他

0.04%

外務省によると、インドネシアではムスリムの方が大半を占めており、国民の86.69%がイスラム教を信仰しています。[注5]

日本で就労するインドネシア人にも敬虔なムスリムが存在します。1日5回の礼拝や、豚肉やアルコールの摂取を禁じるハラム、一定期間中飲食を絶つラマダーンなど、インドネシア人を雇用する場合は、ムスリムならではの風習に配慮する必要があります。

[注5] 外務省「インドネシア基礎データ」

インドネシアと日本の労働環境の違い

インドネシアと日本の労働環境は大きく違います。

インドネシアで海外拠点を設立する場合や、新たにオフショア開発を検討する場合は、インドネシアならではの労働環境を熟知しておく必要があります。

特に注意すべきなのが、インドネシアの労働法規と州ごとの最低賃金月額です。ここではインドネシアへの進出を目指す日系企業を対象として、インドネシアと日本の労働環境の違いを詳しく解説します。

日本の労働基準法よりも労働者の権利が大きい

インドネシアの労働法は、日本の労働基準法よりも労働者の権利が手厚く保護されているのが特徴です。例えばインドネシアでは、日本よりも従業員を解雇することがむずしい傾向にあります。

従業員を解雇するには、原則として産業関係裁判所の決定が必要になります。

また懲戒解雇をはじめとして従業員側に過失がある場合も、退職金の支払いが必要なケースがほとんどです。インドネシアに進出する場合は、まず日本の労働基準法との違いを把握することが大切です。

州ごとの最低賃金月額が存在する

インドネシアでは、各州の知事が「州別法定最低賃金」を定めています。

州別法定最低賃金とは「一人の労働者が適正な生活を送るために必要な費用」を数値化したものです。

法的な定めはないものの、インドネシアの企業は州別法定最低賃金を上回る給与を支払うことが求められます。2019年に決定された州別法定最低賃金は以下の通りです。なお、為替レートは1ルピア0.09円として計算しています。[注6]

主な地域

最低賃金月額

ジャカルタ特別州

約35,468円

西ジャワ

約15,015円

中部ジャワ

約14,448円

東ジャワ

約14,670円

リアウ諸島

約24,927円

バンテン州

約20,411円

バリ

約20,681円

[注6] 労働政策研究・研修機構「2019年州別最低賃金と地域別、産業別の動向」

アルバイトやパートは原則的に認められない

日本と違い、インドネシアではアルバイトやパートという働き方が認められていません。インドネシアの雇用形態は、大きく分けて3種類あります。

  • 期間の定めのない労働契約(無期雇用契約)
  • 期間の定めがある労働契約(有期雇用契約)
  • 日雇い労働

インドネシア企業における正社員は、一番目の期間の定めのない労働契約に当たります。契約社員に相当するのが、期間の定めがある労働契約です。

ただし、労働者と書面での契約をかわさない場合、インドネシアの労働法では有期雇用契約ではなく無期雇用契約として取り扱われます。また、日雇い労働者と雇用契約を結ぶ場合は、その都度契約書を書面で交付しなければなりません。

インドネシア企業に特有の2つのルール

インドネシアの企業には、日本企業には珍しいルールが2つあります。日本で労働するインドネシア人は当たり前として認識している可能性もあるので、雇用前に日本の企業でのルールや規定をすり合わせるようにしましょう。

  • 医師の診断書がある場合は病欠しても給与が支払われる
  • 勤続期間が1ヵ月以上の場合は宗教祭日手当(THR)が発生する

その一つが、傷病休暇に関する取り扱いです。

インドネシアでは、医師の診断書がある場合、労働者が病欠しても原則100%の給与が支払われます。また、ムスリム国家であるインドネシアでは、宗教祭日手当(THR)と呼ばれる手当の支給が義務づけられています。

医師の診断書がある場合は病欠しても給与が支払われる

インドネシアと日本では、傷病休暇に対する考え方が大きく違う点の1つでしょう。

インドネシアでは、怪我や病気でやむを得ず欠勤した場合、その期間中の給与を全額受け取ることができます。所属先の企業に医師の診断書を提出する必要がありますが、有給休暇とは別の扱いとなります。

日本にも傷病休暇の考え方はありますが、あくまでも会社の福利厚生という扱いです。法定休暇として定められた有給休暇と違い、傷病休暇を設けるかどうかは会社ごとの判断によります。

一方、インドネシアでは数カ月もの傷病休暇が労働法で定められています。また、原則として傷病休暇の取得を理由に労働者を解雇することもできません。

勤続期間が1ヵ月以上の場合は宗教祭日手当(THR)が発生する

インドネシアはムスリムの割合が多いイスラム国家です。

そのため、毎年ラマダーン(断食月)と呼ばれる宗教行事が行われます。ラマダーンが終わった後の祭日のことをレバランと呼ぶのですが、インドネシアの企業はレバランの日に合わせて、宗教祭日手当(THR)と呼ばれる手当を支給する必要があります。

厳密には、宗教祭日手当はイスラム教に限らず、仏教やキリスト教の祭日にも当てはまる賃金制度です。ただし、インドネシアはイスラム教徒が大半を占めることから、宗教祭日手当ではなくレバラン手当と呼ばれています。

インドネシア人を雇用する場合は在留資格や受け入れ手続きに注意が必要!

日本において2019年4月から特定技能制度がスタートし、介護やビルクリーニング、建設や農業、外食業など、就労可能な職種が増加しました。

そのため従来の技能実習生としてだけでなく、特定技能外国人としてインドネシア人を受け入れる企業も増えています。インドネシア人を雇用する場合、受け入れ企業と労働者のそれぞれがIPKOLに登録し、手続きを行う必要があります。

また、インドネシアはムスリムが多いため、礼拝やハラム、ラマダーンなど、イスラム教に特有の風習に配慮しなければなりません。企業側はインドネシア人を雇用する際の注意点をあらかじめ把握し、雇用時にトラブルなどがないように進めましょう。

 

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