特定技能と技能実習は違う!どこが違うの?メリットデメリットを解説します
特定技能 2022.10.14

企業が外国人雇用をするときの方法として、技能実習や特定技能の活用が考えられます。
技能実習と特定技能は似たような制度として混同されることもありますが、両者には明確な違いがあります。
本記事では技能実習と特定技能の違いや特徴についてご説明いたします。
特定技能と技能実習の11の違い
特定技能や技能実習はいずれも、外国人が日本に滞在するためのビザの一種です。日本で実習や勤務を行うという条件で日本への渡航や滞在が許可されます。
特定技能と技能実習は混同されやすいですが、違いがあります。違いは以下のとおりです。
1.制度の目的が異なる
特定技能と技能実習はそれぞれ異なる目的を持っています。
技能実習制度は、日本で実習を行うことによって培われた技能やスキル、知識などを母国に持ち帰ってもらうことを目的としています。
技能実習生として来日するのは主に開発途上地域の若年層です。技能実習生は多くの場合、母国では習得困難な業務の技能や知識を学べるような業務を選んで来日し、実習を行います。技能実習で得たものを発展途上地域に持ち帰ることで経済発展につなげて人づくりに寄与するという、いわば国際協力の推進を目指しています。
特定技能制度はこれとは異なり、日本国内における人手不足解消のための人材確保を主目的としています。特定技能制度の対象となる、人手不足が特に深刻化している14の分野は特定産業分野と呼ばれます。
特定技能制度を活用する際には、外国人労働者に対して業務レベルをチェックする試験や日本語の試験が課せられます。特定技能制度での雇用には、現場で即戦力として活躍できるだけの知識やスキルが備わっている人材を確保できるメリットがあります。
2.制度の法的根拠や定義が異なる
それぞれの制度の目的が異なるのは、そもそも法的な根拠が異なっているためです。技能実習制度は、平成29年に定められた「技能実習法」(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)にもとづいて運用されています。法律上、技能実習はあくまでOJTによる実習であると定められています。つまり、日本の企業の労働力需要の調整手段として技能実習制度を利用することはできません。
特定技能の概要は「出入国管理及び難民認定法」に定められています。技能実習とは異なり、特定技能の形で外国人を受け入れれば労働力として活躍してもらうことが可能となるため、よりメリットが大きいといえます。
3.在留期間が異なる
特定技能には1号と2号という区分が定められています。特定技能1号で来日した場合、在留期間は通算で5年となっています。
特定技能2号であれば期間の制限なく長期にわたって日本で働くことができます。ただし、2022年現在特定技能2号が適用されているのは建設業と造船・舶用産業に限られています。
技能実習には1号と2号、3号という3つの区分があります。このうち、1号の在留期間は1年以内、2号の在留期間は2年以内となっています。技能実習3号も2年以内で、1号から3号まで移行することで最大で5年まで在留できます。ただし、技能実習で5年にわたって滞在するためには、技能評価試験を都度受験して合格する必要があります。
1号から2号に移行する際には学科と実技の、2号から3号への移行では実技の試験が課されます。試験を受けて在留期間を伸ばした場合でも、5年の実習が満了したあとには母国に帰国します。技能実習はあくまで母国に技術を伝えることを目的としているため、期間満了後に日本に滞在することはできないのがデメリットです。
しかし、特定技能の創設後には技能実習生として来日したのち、長期にわたって日本に滞在し続けることも可能となりました。技能実習から特定技能1号への移行という方法を選べば、最大10年にわたって日本国内で働くことができます。また、特定技能2号が適用となれば、上限なく永続的に日本に滞在することが可能です。
4.受け入れの方法が異なる
特定技能において外国人労働者を受け入れる方法は多岐にわたります。受け入れ企業が求人広告を出す方法のほか、人材紹介会社を利用して労働者を探すなどの方法も考えられます。
しかし、技能実習生は求人募集などの方法で受け入れることはできません。技能実習の制度には、取りまとめを行う送り出し機関や連携する監理団体があります。
技能実習は、この監理団体からの紹介でのみ受け入れが可能です。
5.受け入れられる業種が異なる
技能実習において2022年現在受け入れができる業種は85種類156作業と定められています。
例えば農業であれば耕種農業と畜産農業、漁業であれば漁船漁業や養殖業といったように、業種は細かく分類されています。ほかに、建設業や食品製造業、機械勤続、繊維衣服などの各種業界でさまざまな業種を設け、技能実習生を受け入れています。
特定技能には、14種類の業種が設定されています。人手不足が激しい建設業や宿泊業、農業や漁業のほか、介護などの分野でも特定技能の外国人労働者を積極的に受け入れています。
6.対応できる作業の内容が異なる
技能実習は、実習生が本国にスキルを持ち帰ることによる技術移転を目的としています。そのため、単純作業を任せるなど技能実習生を労働力として活用することはできません。
技能実習生には数多くの技術を身につけてもらうため、さまざまな業務の中でも専門性の高いもののみを任せる必要があります。特定技能は企業の人手不足解消を目的とした制度なので、外国人労働者に単純作業を任せられるというメリットがあります。
しかし法律上は、メインの業務に付随した業務として単純作業を任せることが可能となっています。単純作業のみに従事させるのは問題視されることがあるため気をつけましょう。
7.労働者の業務レベルが異なる
技能実習の場合、受け入れ当初の外国人の技能レベルが問われることはありません。技術を母国に持ち帰ることを目的として来日しているという点から考えて、多くの技能実習生はそれほど高いスキルを持ち合わせていません。
これに対し、特定技能の在留資格で渡航する外国人労働者には、初めからある程度のスキルが備わっているという大きなメリットがあります。特定技能は特定分野で即戦力として活躍してもらうための制度なので、制度利用の要件としてその分野における一定水準以上の技能や知識を持っていることが求められます。
特定技能のそれぞれの分野では、就業前に特定技能試験や日本語試験が行われます。これらの試験を突破している外国人労働者は、現場でも十分な戦力として活躍してくれます。
8.転職の可否が異なる
技能実習の在留目的は労働ではなくあくまで実習です。つまり、その事業所で実習を行うことが目的の来日のある必要があります。
ですが、技能実習で絶対に転職ができないというわけではありません。やむを得ず実習先を変更するときには転籍という形で手続きを行います。特定技能は就労の在留資格なので、労働者はよりよい職場を求めて転職することができます。
ただし、特定技能の在留資格は特定の仕事に就くことを要件として発行されます。介護なら介護、建設業なら建設業といったように、同一の職種に限り転職が可能となります。
なお、技能実習のために来日し、その後特定技能に移行した場合であれば同一職種内で転職できるようになります。
9.受け入れ人数が異なる
受け入れができる人数も、特定技能と技能実習では異なっています。特定技能であれば原則として受け入れ人数に制限はありません。介護分野と建設分野には一定の人数制限が設けられていますが、ある程度まとまった人数の労働者を確保することは十分可能です。
技能実習の受け入れには細かい人数枠が定められています。例えば技能実習1号では、常勤職員の総数を超えて技能実習生を受け入れることはできません。また、技能実習2号でも、受入人数は常勤職員の総数の2倍を超えない範囲となっています。
10.家族帯同の可否が異なる
外国人労働者にとって気になる点の1つに、家族帯同の可否があります。家族帯同とは、母国にいる配偶者や子どもを日本に呼び寄せて一緒に生活することをいいます。就労や留学などの在留資格を持っている外国人には家族の帯同が認められています。
しかし、技能実習や特定技能1号では家族を帯同することができません。家族を帯同できるのは、特定技能のうち2号の資格を満たしている場合に限られます。
ただし2022年の時点で、特定技能の2号が適用となっているのは建築分野と造船・舶用産業分野に限られています。特定技能2号は特定技能外国人労働者のうち5年にわたって働いており、十分な技術があると認められる人に限り適用されます。そのため、特定技能2号の在留資格で家族を帯同しているケースはそれほど多くないのが現状です。
11.行政手続きの内容が異なる
特定技能と技能実習は制度が異なるため、外国人を受け入れる際の行政手続きの内容も違っています。
特定技能で外国人労働者を受け入れる際には、法務大臣による在留資格審査があります。このとき、外国人労働者が日本で安心して暮らせるよう、企業は支援計画を策定して提出しなければなりません。ほかに、地方出入国在留管理局への届出も必要です。
技能実習生を受け入れるときにも法務大臣による在留資格審査が行われます。さらに、外国人技能実習機構に技能実習計画を提出し、認可を受けることが求められます。
特定技能と技能実習の違いをしっかり把握
特定技能と技能実習はどちらも現場で外国人に働いてもらう制度ですが、その内容は大きく異なります。
特に大きな違いは、国際協力のための技能実習生を受け入れるか、それとも人手不足の企業の即戦力となる人材を受け入れるかという点です。また、手続きの方法や受け入れの期間などにも違いがあります。
企業が外国人を受け入れる際には、それぞれの制度の特徴やメリット、デメリットを十分に見極めましょう。