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2025.06.21
外国人労働者

外国人雇用で使える人材開発支援助成金とは?対象研修・助成額をわかりやすく解説

少子高齢化や人手不足の影響を受け、多くの企業で外国人材の雇用が進んでいます。とはいえ、言語や文化の違いから、外国人社員が職場に定着し、戦力として活躍するまでには一定のサポートが必要です。

そこで注目されているのが、外国人社員への研修費用を補助する「人材開発支援助成金」の活用です。国が提供するこの制度を使えば、OJTや日本語教育、安全衛生講習など、さまざまな研修にかかる費用を軽減できます。

本記事では、外国人雇用を行う企業に向けて、人材開発支援助成金の制度概要から対象研修・助成額・申請手続きの流れまでをわかりやすく解説。自社の人材育成に助成金を上手に取り入れるためのポイントも紹介します。

「制度が複雑そうで手を出しづらい」と感じている方も、ぜひ最後までご覧ください。

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外国人向け研修に使える人材開発支援助成金とは?

「人材開発支援助成金」は、厚生労働省が実施している助成制度で、企業が従業員に対して職業訓練を実施した際、その費用の一部を支給するものです。対象となるのは日本人だけではなく、適切な在留資格を持つ外国人労働者も含まれます。

制度の目的は、企業内での人材育成を促進し、労働者のスキルアップや職場定着を支援することです。特に、言語や業務習得に不安のある外国人材にとっては、入社後の研修が非常に重要となるため、助成金を活用することで受け入れ環境を整備しやすくなります。

助成対象となる研修は、OJT(職場内訓練)だけでなく、外部講師を招いたOFF-JT(職場外研修)なども含まれます。例えば、日本語教育、安全衛生講習、接客マナー、専門的な業務知識を学ぶ研修などが対象となる場合も。

なお、助成金の利用にあたっては、「研修の目的が明確であること」「所定の手続きに則って事前に申請していること」など、いくつかの条件を満たす必要があります。そのため、制度の仕組みを正しく理解し、スケジュールを逆算して準備を進めることが大切です。

助成内容・支給額の目安

人材開発支援助成金の「人材育成支援コース」では、企業が従業員(包括的には外国人社員も含む)に実施する研修に対し、研修にかかった経費だけでなく、その研修中の賃金の一部を助成する仕組みになっています。

まず、OFF‑JT(外部研修)の経費については、中小企業の場合に通常45%が助成され、研修後の賃金アップや資格手当の導入といった要件を満たせば助成率は最大60%になります 。また、研修中に支払った賃金についても補助があり、中小企業では1時間あたり約800円から最大1,000円が支給されるため、研修実施の負担を大きく軽減できる点がメリットです。

次に、OJTとOFF‑JTを併用する「認定実習併用職業訓練」では、経費の助成率は同様に45%から要件達成時の60%となり、支給額は最大で20万円(要件達成時には25万円)に達します。同様に、有期契約労働者を正社員転換に向けて育成する「有期実習型訓練」でも、経費の助成が適用され、要件を満たすことで上限10〜13万円が支給されます 。

さらに、助成金総額を加算できる要件として、研修修了後1年以内に対象従業員の賃金を5%以上上昇させる、または資格手当を導入し賃金3%以上アップさせる点も覚えておきましょう。これにより、上乗せ分としてプラス15%が経費助成に加算されるため、要件を満たす企業にとってはより多くの助成を受けられる可能性が高まります。

なお、これら助成は同一事業所で年間合計1,000万円まで申請可能です。複数のコースを組み合わせて活用することも可能ですが、限度額には注意が必要です。

参照:厚生労働省:人材開発支援助成金

助成金の対象となる外国人研修の例

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、主に以下の3タイプの研修が対象です。外国人社員にも活用しやすく、業務定着やスキルアップに直結する内容です。

1. OFF‑JT中心の「人材育成訓練」

座学やeラーニングを主体とするOFF‑JT研修は、人材育成訓練として広く活用されています。例えば、ビジネス日本語や接客マナー研修、異文化コミュニケーション講座などが該当し、10時間以上の実施が必要です 。eラーニング形式も認められており、企業の状況に応じて柔軟な実施が可能です。

2. 実務(OJT)とOFF‑JTを組み合わせた「認定実習併用職業訓練」

OJTとOFF‑JTをセットで計画し、厚労大臣の認定を得た訓練プログラムも助成対象になります。6ヶ月〜2年の実施期間で、総受講時間850時間以上、OJT比率20〜80%程度が要件です 。これにより、職場実務と座学を組み合わせた本格的な教育が実現できます。

3. 有期契約社員向け「有期実習型訓練」

正社員を目指す有期契約の外国人社員向けには、有期実習型訓練が強力なサポートになります。該当者は、OFF‑JT時間が全体の8割以上、訓練期間が2ヶ月以上(425時間/6ヶ月相当)などの要件を満たす必要があります。この制度は、外国人社員の正社員化を支援する上で非常に有効です。

助成対象にはその他、特別育成訓練や定額制サブスクリプション型の研修、DX人材向けのリスキリング支援など、多様なコースも存在します。特に、外国人社員が参加しやすいeラーニングやサブスク形式訓練も対象に含まれており、柔軟な教育設計が可能です。

ただし、業務に直接関係しない教養・趣味講座や、単なる資格取得講座などは対象外となるため、計画時は研修内容が「職務関連」であるか確認してください。

申請の流れと必要書類

外国人社員向け研修で助成金申請を検討する際は、申請のタイミングと必要書類をしっかり把握し、フローに沿ってミスなく手続きを進めることが大切です。ここでは、申請の際に必要な情報を網羅的に解説します。

ただし、実際に申請する際は、厚生労働省からの最新のお知らせを適宜確認するようにしてください。

申請のタイミングとスケジュール

助成金を受け取るためには、研修開始日の1か月前までに「職業訓練実施計画届」などの計画書類を労働局に提出する必要があります 。これは制度導入の大前提であり、遅れるとその研修自体が助成対象外になるため、社内で逆算してスケジュールを組むことが求められます。研修実施後は、終了日の翌日から2か月以内に「支給申請書」や実績報告書を提出しなければならず、この期日管理も忘れてはいけません。

申請に必要な書類一覧

人材開発支援助成金を活用するには、研修開始前と研修終了後に提出すべき書類を適切に準備し、申請期限を守ることが非常に重要です。特に外国人社員が対象になる場合は、在留資格の確認など追加対応が必要となるため、事前準備を怠ると「対象外」「不支給」となるリスクが高まります。

ここでは、「① 訓練計画届出時(研修開始1ヶ月前までに提出)」と「② 支給申請時(研修終了後2ヶ月以内に提出)」に分けて、必要な書類を一覧で整理しました。漏れや不備がないよう、チェックリストとしてご活用ください。

① 訓練計画届出時(研修開始1ヶ月前までに提出)

  • 職業訓練実施計画届(様式第1号)
  • 年間職業能力開発計画(様式第3号)
  • 訓練別対象者一覧(様式第4号)
  • 事前確認書
  • 事業所確認票
  • 企業の規模等を示す書類(登記簿謄本・会社案内等)
  • 対象者の雇用状況がわかる書類(雇用契約書または案)
  • 訓練カリキュラム・実施日時・場所の資料
  • OFF‑JTを社内で実施する場合:実施場所がわかる「見取図」

② 支給申請時(研修終了後2ヶ月以内に提出)

  • 人材開発支援助成金 支給申請書(様式第4号)
  • 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
  • 支払方法・受取人住所届(振込口座の通帳写しを添付)
  • 賃金助成およびOJT助成の内訳(様式第5号)
  • 経費助成の内訳(様式第6号)
  • OFF‑JT実施状況報告書(様式第8‑1号)
  • 支給申請承諾書(外部講師等を使用した場合・様式第12号)
  • 領収書・振込通知書・総勘定元帳の写しなど、支払い証拠書類
  • 賃金台帳・出勤簿・タイムカード等、勤務実績を示す書類
  • 雇用契約書または労働条件通知書(更新がある場合)
  • 就業規則・賃金規定・シフト表等
  • (該当する場合)OJT訓練日誌、通信制・eラーニングの結果報告書

外国人社員向けに注意したい追加書類

  • 在留カードまたは就労資格証明書(原本または写し)
  • 外国語併記の就業規則等(求められる場合あり)

上記リストをチェックリストとして活用いただくと、書類漏れのリスクを大きく減らせます。提出後は審査に数か月かかる場合もあるため、計画的なスケジューリングをおすすめします。

申請から支給までの手続きフロー

助成金をスムーズに受け取るためには、各手続きを順序立てて進め、期限や要件をしっかり守ることが重要です。以下のような流れで進行します。

1.申請前の前提確認

まずは、自社が雇用保険適用事業所であることを確かめ、職業能力開発推進者を選任します。必要に応じて労働局に事前相談を行い、助成対象となる条件を整理しておきましょう。

2.訓練計画の作成・届出

研修開始の1か月前までに「職業訓練実施計画届」や「年間職業能力開発計画」等の計画書類を所管労働局に提出します 。認定実習併用訓練や有期実習型の場合は、厚生労働大臣の認定やキャリアコンサルティングも必要になるため、要件に応じたスケジュール調整が必須です。

3.計画に沿った研修実施

研修を予定どおり実施し、研修費用は支給申請前までに支払い、賃金台帳や出勤簿、領収書など証拠書類は漏れなく保管します。

4.実績評価(該当訓練の場合)

認定実習併用訓練や有期実習型では、ジョブカード等により職業能力の成果評価が求められます 。この評価をもとに、支給申請の要件達成を立証します。

5.支給申請書類の提出

研修終了日の翌日から2か月以内に、「支給申請書」や「OFF‑JT実施報告書」、賃金台帳、領収書、通帳写しなど必要書類一式を所管労働局に提出します。オンライン申請の場合はGビズIDの取得も事前に済ませておくとスムーズです。

6.審査と支給決定

労働局が提出内容を審査し、要件を満たす場合は「支給決定通知書」が発行されます。決定後、数週間から数か月かけて助成金が振り込まれます。万一不備があれば差し戻しや不支給通知が届くこともありますので、審査期間中も連絡に備えましょう。

申請時によくあるミスと注意点

申請時の代表的なミスは、計画届が遅れる、賃金台帳や出勤簿の不備、OFF‑JTの場所の記録不足、提出書類に原本が必要なのにコピーを提出するなどがあります 。

特に外国人社員の場合は、在留資格のある在留カード・就労資格証明書などの本人書類原本提出が求められるケースがあり、これが用意できないと不支給となることがあるため要注意です。

また、審査には数か月かかるため、資金繰りに影響が出ないよう余裕を持つことや、提出後の書類差し替えが基本できない点も忘れずに押さえましょう。疑問点は早めに管轄の労働局に確認し、労働局担当者との連携も円滑に進めることで、申請ミスを防ぎやすくなります。

外国人雇用と助成金活用のポイント

外国人材を雇用する企業にとって、言語や文化、業務習得のギャップをどう埋めるかは大きな課題です。せっかく採用しても、適切なフォローがなければ短期間での離職につながり、採用コストや現場の混乱が生じてしまうこともあります。

そうした中で、人材開発支援助成金をうまく活用することは、外国人社員の定着と成長、ひいては企業の受け入れ体制の強化にも直結します。ここでは、助成金活用のメリットや他制度との併用による相乗効果について、具体的なポイントを見ていきましょう。

助成金を活用することで、外国人社員の定着率が向上する

日本語や業務理解に不安のある外国人社員にとって、入社直後の研修は非常に重要なステップです。言葉や業務知識に関する研修を体系的に用意することで、不安の軽減や職場への適応が早まり、「辞めずに働き続けられる環境」が整います。

人材開発支援助成金を活用すれば、こうした研修にかかるコストを抑えながら、必要なサポートを提供することが可能になります。結果として、社員が「大事にされている」「学びながら成長できる」と実感しやすくなり、離職リスクの軽減につながるでしょう。これは、企業にとっても採用の安定性や育成効果を高める大きなメリットといえます。

研修制度の整備が、社内の受け入れ体制づくりにもつながる

助成金の活用によって外国人社員向けの研修制度を整備すると、それは同時に日本人社員も含めた社内の教育体制やマネジメント体制の強化にもつながります。

例えば、OJTやOFF-JTの内容を明文化し、全社員で共通認識を持って研修にあたることで、属人的だった教育が標準化され、教育担当者側の負担も減っていきます。また、文化や言語の違いを意識したマネジメントが浸透することで、外国人社員だけでなく多様なバックグラウンドを持つ人材が働きやすい環境づくりにも効果的です。

結果として、「教える文化」「支え合う文化」が社内に根づき、受け入れに前向きなチームづくりが進んでいくのです。

他制度と組み合わせて使うことで、コスト負担をさらに軽減できる

人材開発支援助成金は単独でも活用価値の高い制度ですが、他の支援制度と組み合わせることで、さらなるコスト削減と人材育成の効率化が可能になります。

たとえば、特定技能外国人を受け入れる場合には、特定技能制度の支援計画と連動させた研修設計を行うことで、必要な教育を体系的に実施できます。また、対象者が日本語学校等に通っている場合は教育訓練給付制度と組み合わせることも検討可能です。

ただし、制度ごとに補助対象の範囲や要件が異なり、「同一経費の二重取り」ができないルールもあるため、事前に制度の組み合わせ可否を確認することが重要です。管轄する労働局や支援機関に相談しながら進めると、制度間の重複リスクを避けながら、最適な活用プランを描くことができるでしょう。

まとめ|外国人社員の戦力化に、助成金の活用を

人手不足が深刻化する中、外国人材の採用は多くの企業にとって重要な選択肢となっています。しかし、採用後の育成や定着支援に課題を感じている企業も少なくありません。そうした課題に対して、人材開発支援助成金は、研修費用や賃金の補助を通じて、外国人社員を安心して育成できる環境づくりをサポートしてくれる制度です。

制度を上手に活用することで、教育にかかる負担を軽減しながら、現場の理解を深め、長期的な人材定着を実現できます。また、制度を導入・運用する過程で、社内の研修体制やマネジメント力が高まり、日本人社員を含めた組織全体の底上げにもつながるでしょう。

外国人社員を「戦力」として迎え入れ、共に成長していくためには、継続的な教育と支援が不可欠です。助成金という公的サポートを味方につけ、無理なく、効果的な育成プランを描いていきましょう。

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