日本で永住権を取得する方法とは?
特定技能 2023.02.20
日本の永住権は取得する条件が厳しく、保有している外国人は30%以下です。[注1]
しかし永住権を取得すれば職業への制限がなくなり、さまざまな生活ができるようになります。
本記事では永住権とはそもそもどのようなものなのか、取得するポイント、申請の流れなどを詳しく解説します。
[注1]出入国在留管理庁「令和3年6月末現在における在留外国人数について」
永住権の基本
永住権を取得すれば、日本での活動の幅が広がります。まずは永住権がどのような資格なのか正しく理解しておきましょう。
永住権は在留資格の1つ
永住権は、外国人が日本に滞在するために必要な在留資格の1つです。名称のとおり、日本での永住許可を得られるもので、保有していれば在留期間の定めがなくなります。
加えて、日本での活動の制限もなくなります。職種や業種を問わず就労でき、自ら起業も可能です。
しかし取得後も永住権の更新は必要です。。永住者であっても国籍は外国籍のままであるため、在留カードを携帯し定期的なカードの更新を行いましょう。
永住権の取得は難しい
永住権を取得すれば在留資格更新の手間から開放され、就労も自由にできます。そのため、長く日本で暮らしたいと望む外国人の多くは、永住権の取得を目指しているでしょう。
しかし、永住権取得の条件は厳格に定められており、誰もが取得できるものではありません。
令和3年度6月末の時点では、永住権を取得している外国人の割合は29.0%と少ない数値となっています。。[注1]
条件の厳しさに加え、書類の複雑さや身元保証人の必要性などが外国人にとっての大きなハードルになっているのでしょう。
次項では永住権取得の条件を解説していますので、永住権の取得を目指している場合はぜひ続けてお読みください。
[注1]出入国在留管理庁「令和3年6月末現在における在留外国人数について」
永住権を取得する3つの条件
永住権を取得するには、善良であることや日本で自立した生活ができることなど、3つの条件を満たさなくてはいけません。それぞれの条件を詳しく解説します。
素行が善良であること
法務省が定める永住許可の条件では「法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。」とされています。[注2]
世界的に見ても治安が良いとされる日本で、トラブルのない生活を送れることが条件になっているわけです。
犯罪行為や出入国管理及び難民認定法(入管法)の違反をはじめとした、法令違反はあってはいけません。また軽微な交通ルール違反でも、繰り返すと素行に問題ありと判断されることが多いです。
[注2]出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和元年5月31日改定」
独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
独立して生計を立てられることも条件の1つです。世帯年収が300万円以上あれば良いという話もありますが、明確に「世帯年収がいくらあれば問題ない」といった基準は設けられていません。
資産状況や保有している技能などの観点から、将来的にも安定した生活ができることも判断材料です。
この判断には配偶者の仕事や資産状況もチェックされます。世帯年収が高い場合でも不許可になることや、逆に低くても許可が下りる可能性もゼロではありません。
国益適合要件を満たしていること
国益適合要件とは、対象者が日本の国益になると認められることをいいます。主にチェックされるのは、5つの要件です。
1. 継続して10年以上、日本に在留している
国益適合要件を満たすには、原則として10年以上日本に在留している必要があります。
加えて、このうちの5年以上は就労資格か居住資格を持って在留していなくてはいけません。
永住者の配偶者は実体を伴った婚姻生活が3年以上継続している状態で、1年以上日本に在留していることが条件です。
2. 罰金刑・懲罰刑を受けていない
罰金や懲罰を受けていないことも国益適合要件に含まれます。
窃盗や傷害などの犯罪行為はもちろんですが、交通ルール違反も含まれるため、比較的軽微だと感じられるような違反行為もしてはいけません。
3. 公的義務を履行している
税金・年金・保険料の納付や、出入国管理の届出など、公的義務を漏らすことなく履行していることも条件です。
「知らなかった」では許されませんので、永住権の取得を目指す場合は日本での公的義務をしっかり把握する必要があります。
4. 現在有している在留資格の最長在留期間を持って在留している
現在保有している在留資格で認められている在留期間が、その在留資格の最長期間になっていることも要件の1つです。
在留資格にはさまざまなものがあり、同じ在留資格でも在留期間の定めには違いがあります。
例えば、就労ビザの多くでは在留期間が3カ月、1年、3年、5年の4つに分かれています。永住権の取得を有利にするためには、この在留期間が最長の5年になっていることが望ましいです。
5. 公衆衛生上の観点から有害となる恐れがない
感染症への感染や中毒の恐れがないことや、衛生的な生活が送れていることも重要なポイントです。公衆衛生を乱す生活をしている場合は不利になります。
審査の際は、在留履歴やこれまでの生活がすべてチェックされます。一時的に生活や衛生面を整えただけでは国益適合要件を満たせない場合があるため、日々の生活で衛生や安全には十分な意識が必要です。
永住権の申請に必要なもの
永住権を申請する際には、さまざまな準備が必要です。不備があるとそれだけで許可が下りませんので、十分に注意して準備しましょう。
各種書類
永住権の申請には、大きく分けると申請書類・証明書・審査用の資料・身分証明書の4種類が必要です。[注3]
書類の書き方や準備できる資料の内容などによって、結果が変わることも少なくありません。時間をかけて万全にできるように準備しましょう。
[注3]出入国在留管理庁「永住許可申請」
1. 申請書類
申請書類は指定書式で作成する書類です。
永住許可申請書 |
必要事項を間違いのないように記入します。 法務省のホームページから申請書をダウンロードできます。 法務省永住許可申請:https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/zairyu_eijyu01.html |
身元保証書 |
申請者の身元を保証する書類です。身元保証人は日本人または永住者に限ります。 |
申請理由書 |
永住を希望する理由や訪日理由に加えて、近況や将来の予定、家族の状況などを記載します。 永住する必要があることや、納得感のある理由、安定した生活を営んでいることが分かる記載があると有利です。 |
了解書 |
申請後に状況に変化があった場合は、その報告を遅延なく行うことを記載した誓約書です。 |
これらの書類は内容や書き方で審査結果が変化する可能性があります。丁寧かつ正確な内容を記載し、申請理由書はできるだけ詳細に記載しましょう。
2. 証明書
役所や勤務先などで発行してもらう証明書で必要なものは以下のとおりです。
配偶者の戸籍謄本 |
日本人と婚姻関係にある場合にのみ必要です。 |
婚姻証明書(日本発行のもの) |
永住者と婚姻関係にある場合にはこちらが必要です。 |
住民票の写し |
同居家族(世帯)全員が記載されているものが必要です。 |
住民税の課税証明書 |
原則直近5年分を用意します。 場合によっては3年分、1年分でも問題ありません。 |
住民税の納税証明書 |
原則直近5年分を用意します。 場合によっては3年分、1年分でも問題ありません。 |
納税証明書 |
居住地を管轄している税務署で発行してもらいます。 |
在職証明書 |
勤務先で発行してもらうものです。 入社年月日・所属部署・職種・役職・報酬などの記載があれば、書式に規定はありません。 |
3. 審査時にあると有利な書類
審査を有利にするために必要な書類は以下のとおりです。
残高証明 |
銀行口座の通帳をコピーしたものや、残高証明ができるものがあると資産を証明できます。 |
資産の保有証明 |
不動産や株式を保有している場合は、それらを証明する書類を提出すれば、資産として認められ審査を有利に進められます。 |
資格や表彰の証明 |
日本語検定や国家資格など、日本で暮らす上で有利な資格や、社会貢献を示す表彰状や感謝状があれば積極的に提出しましょう。 |
これらの書類や証明書は必ずしも必要なものではありません。
しかし十分な資産があることや、就業に有利な資格、善良な人間であることを裏付ける証拠になり得るものは審査を有利に運びます。保有している場合はぜひ準備しておきましょう。
4. 身分証明書等
窓口や必要書類と一緒に提出が求められる書類です。
旅券(パスポート) |
窓口で提示します。 |
在留カード |
窓口で提示します。 |
申請用の写真 |
永住許可申請書に必要です。 3カ月以内に撮影されたもので、縦4㎝×横3㎝の無帽子無背景のものを準備しましょう。 |
健康保険証 |
同居家族がいる場合は全員分のコピーを用意します。 |
国民健康保険税の納付済領収書 |
国民健康保険に加入している場合に必要です。 直近2年か1年分を用意しましょう。 |
年金納付の証明書 |
ねんきんネットでの納付状況確認ページや、年金事務所で発行してもらった証明書を準備します。 |
学位証明書 |
大学の卒業証書や学位を証明できるものがあればコピーを用意します。 |
5. 身元保証人関連
以下は身元保証人となる人物に関する書類で必要なものです。申請する人の分とは別に準備しましょう。
身分証明書のコピー |
運転免許証・在留カード・健康保険証などのコピーを用意します。 |
住民票の写し |
保証人となる人のみの記載で問題ありません。 |
住民税の課税証明書 |
直近1年分を準備します。 |
在職証明書 |
勤務先に発行してもらいます。 |
これらの他にも、個人の状況によって必要な書類が発生する場合があります。求められた書類は迅速に準備して、真摯な態度で正直に申請に臨むようにしましょう。
手数料
永住が許可される場合(永住権を取得できるとき)は、手数料が必要です。収入印紙で納付しますので、許可が下りた場合は準備しましょう。納付の際には規定の手数料納付書を使います。
ちなみに申請時には手数料はかからず、許可が下りなかった場合も手数料は不要です。
身元保証人
永住権の申請では、身元保証人が必要です。日本人か永住者のみが申請者の身元保証人になれるため、永住権のない配偶者や兄弟に頼むことはできません。
保証人というと、借金の連帯保証人のようなイメージがあるかもしれません。
しかし、永住権の身元保証人ではそのような性質は持っておらず、責任を負わされる心配もありません。比較的引き受けてもらいやすいでしょう。
ただし身元保証人になった人には書類の準備をお願いしなくてはいけません。ある程度の負担をかけてしまい、個人情報も扱うことになるため、信頼関係がある人に頼んだ方がよいでしょう。
永住権の申請方法
必要な書類を揃えたら、永住権をいよいよ申請できます。申請する場所と流れを知っておきましょう。
申請する場所
まずは申請する場所を正しく知っておきましょう。[注4]
書類の提出先 |
居住地を管轄する地方出入国在留管理官署 |
受付時間 |
平日9時~12時、13時~16時 手続き内容によって曜日や時間が設定されている場合があるため、事前に問い合わせた方が安心です。 |
相談・問い合わせ先 |
地方出入国在留管理官署または外国人在留総合インフォメーションセンター(0570-13904) |
市区町村の役所とは受付時間が違い、手続き内容によって受付できない時間帯もある点に注意が必要です。
あらかじめ管轄の地方出入国在留管理官署を確認し、電話で必要書類や受付可能時間を把握しておくとよいでしょう。
[注4]出入国在留管理庁「外国人在留総合インフォメーションセンター等」
申請の流れ
永住権の許可を取る際は、一般的に以下のように進めます。
1. 地方出入国在留管理官署に相談する
まずは、管轄の地方出入国在留管理官署の永住相談部門に連絡を取りましょう。
その際に在留資格や来日暦、家族構成など基本的なことを聞かれるため、答えられるようにまとめておくとよいでしょう。
永住権の申請要件を満たしていると判断されると、申請について具体的な案内がされます。
2. 必要書類を準備する
地方出入国在留管理官署で伝えられた必要書類と、申請に有利になる書類などを準備します。
書類の準備には時間がかかることも多いため、住民票の写しや戸籍謄本をはじめ、有効期限が定められている書類は発行のタイミングに注意しましょう。
3. 申請
管轄の地方出入国在留管理官署に準備した書類や申請書を提出します。
混雑している場合は半日ほどかかることもありますので、1日使うつもりで臨んだ方がよいでしょう。
特に3月〜5月は地方出入国在留管理官署が混み合いやすい時期なのでご注意ください。
4. 審査
提出した書類を元に審査が行われます。
この時に、勤務先や配偶者の実家への連絡や訪問などが行われることもあるため、あらかじめ伝えておくと安心です。
また、追加の書類を求められることもあります。必要書類を提出してもまだまだ終わりではありませんので、許可が下りるまでは地方出入国在留管理官署からの連絡にすぐに対応できるように構えておきましょう。
5. 結果通知
永住権の申請が認められた場合は、ハガキが届きます。
ハガキに記載されている内容とおりに手続きを進められれば、永住の在留カードを取得できます。
残念ながら不許可になってしまった場合は、簡易書留で封書が送られてきます。
不許可になった理由が記載されており、詳しく知りたい場合は地方出入国在留管理官署に出向くと教えてもらえます。
一度不許可になってしまった場合も、再度申請することが可能です。しっかりと不許可理由を確認し、その理由を払拭する努力をした上で再度申請しましょう。
永住権の審査にかかる期間
永住権の審査には、4カ月ほどかかるとされています。[注5]
しかし、この期間は法務省が発表した標準処理期間です。混雑状況や、個々の状況によってこれよりも長くかかることが多いです。
長い場合は半年以上もかかってしまうため、準備期間も含めて永住権の取得には1年ほどかかると考えておいた方がよいかもしれません。
[注5]出入国在留管理庁「永住許可申請」
永住権が不許可になる理由
長期間待ったにも関わらず、永住が許可されないというのはとても辛いものです。少しでも審査を有利に運ぶために、不許可になりやすい例を知っておきましょう。当てはまる場合は可能な限り改善し、永住権の取得を目指してください。
年金・社会保険料・税金などに未納や滞納がある
国民の義務として定められている保険料や税金の納付は、非常に厳しく審査される部分です。未納や滞納が残っていると間違いなく不利になるため、申請までに支払を済ませておきましょう。
過去に納付の遅れがあった場合も不利になります。しかしこれは改善する方法がありませんので、遅延させずに支払いをしていくしかありません。
海外の出張や滞在が多い
日本に居住している期間が短いと許可が下りにくくなります。
仕事による出張や里帰りも例外ではありません。日本にしっかりと根ざして生活している事実が必要です。
連続して3カ月以上海外に滞在している場合や、1年で100日以上日本を離れている場合は、かなり厳しい結果になると思っておきましょう。
世帯年収が低い
基本的に世帯年収が低いと、永住権の許可がおりにくいです。
配偶者の収入も世帯年収に入れることが可能ですが、就労活動が認められている在留資格を持っている場合に限ります。
配偶者が家族滞在で日本にいる場合、アルバイトによって収入を得ても世帯収入にはできないのです。
扶養家族が多すぎる
世帯年収が高い場合でも、扶養家族が多いと審査に落ちる可能性があります。扶養家族が多い場合、年収自体もそれに応じて高くなっているのが理想です。
道路交通法違反が目立つ
軽微なものでも、道路交通法違反が複数回ある場合は非常に不利になります。
1年に1回以上の違反がある場合は、特に許可が下りにくくなると考えておきましょう。
道路交通法違反以外でも、少額でも罰金を支払っていたり、トラブルを起こしていたりする場合は審査が厳しくなりやすいです。
日常生活に問題がある
日本の文化や常識に適応でき、円滑な日常生活が遅れていることは永住権の審査で重視される部分です。
住民とのトラブルを起こしたことや、公衆衛生を乱すような行為があった場合は、審査で非常に不利になるでしょう。
日本語でのコミュニケーションスキルやライティングも審査の基準になります。
書類の書き方に問題がある
永住許可申請書の内容に不備があったり、虚偽であることが分かったりすると、当然審査で落とされてしまいます。
さらに、申請理由書の内容が不十分なことや、定型文のような当たり障りのないものになっている場合も落とされる可能性があります。
しっかりと自分の言葉で、審査官に好印象を持たれるように丁寧に記載しましょう。
永住権の取得には条件を満たすことが重要
日本で暮らす多くの外国人が望む永住権の取得は、簡単なことではありません。
居住している実績が必要であったり、ある程度の収入が必要であったり、すぐに満たせない条件も多くあります。
しかし、堅実で誠実な生活を送り、日本での居住実績を積めば夢ではありません。ぜひこの記事を参考にして、永住権の取得を目指してください。