特定技能を利用する11のメリットとデメリットを解説|効果的な利用の方法とは
特定技能 2023.12.22
特定技能は2019年より運用が始まった、日本国内における各業界の人手不足を解消するための制度です。特に人手不足が深刻化している各業界に対し、特定技能の新設という形で外国人の在留受け入れが行われるようになりました。
それ以前の日本の入管法では、高度な知識や技術を持っている外国人材のみを専門的な職業において受け入れる方針を取っていました。しかし、2019年に在留資格特定技能が追加されたことにより、外国人の在留のハードルは大きく下がることとなりました。
日本では、働くことのできる15歳以上65歳未満を生産年齢人口と定義しています。生産年齢人口は1997年を境に減少傾向が続いています。特に、中小企業や小規模事業における人手不足は深刻です。 一部業種では人手不足によって社会基盤の持続が阻害されているため、早急な対応策として外国人材の雇用という方法が提案されました。それが特定技能制度です。
本記事では特定技能制度を利用するメリット、デメリットや注意点について説明します。
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特定技能で外国人材を雇用するメリット
特定技能で外国人を雇用することには数多くのメリットがあります。
特に、人材不足を一気に解消し即戦力を得られるのは大きなメリットといえるでしょう。
ここからは、特定技能を活用するメリットを紹介します。
- 人手不足の解消につながる
- 即戦力として働いてもらえる
- 入国までの期間が短い
- 若年層の労働者を確保できる
- フルタイムで働いてもらえる
- 対応できる業務の幅が広い
- 技能実習からの移行も可能
- 日本語でのコミュニケーションができる
- 企業の海外進出の足がかりとなる
- 一度に多くの労働者を受け入れられる
- 特定技能2号に移行すれば終身雇用も可能
1. 人手不足の解消につながる
深刻な人材不足に悩む企業や事業所にとって、外国人材の雇用は効果的な手段となります。日本人だけでは不足していた労働力が外国人材によって確保されることで、従業員が適切な人数で働ける状態を作れます。
従業員はより集中して業務に取り組むことが可能となり、サービス品質の向上も期待できるでしょう。
さらに、人手不足が解消されることで、日本人社員にとってもメリットがあります。人材採用に手を取られていた人事部の取り組むべき業務が、労働条件や待遇の改善にシフトチェンジできるようになるからです。労働環境を改善することで、既存社員の流出防止にもつながるでしょう。
2. 即戦力として働いてもらえる
特定技能による雇用では、外国人材は特定技能評価試験や日本語評価試験などに合格する必要があります。これらの試験をクリアすることで、現場で働くための最低限のスキルを有していると判断でき、現場で即戦力になることが期待できます。
日本国内での採用活動では、経験者を募集することは容易ではありません。未経験歓迎の要項で応募が集まっても、知識やノウハウをもたない人材を1から育てることは非効率になりうる問題です。人材を育てるための手間やコストが発生することは避けられません。
十分な技術や知識を持つ外国人の採用は、即効性のある効率や生産性アップにつながります。
3. 入国までの期間が短い
旧来の技能実習生は入国の許可に時間がかかっていました。多くの場合、手続きをしてから実際に働いてもらうまでには半年程度の長い期間がかかってしまいます。
特定技能制度を利用した雇用は技能実習生に比べて、入国までにかかる時間が短いのが特徴的です。現地で受けられる試験に合格すればすぐに入国が可能となるため、スピーディーに業務にあたってもらえます。
4. 若年層の労働力を確保できる
労働者の高齢化が進む業種においても、特定技能の活用は有効な一手となります。
特に特定技能で来日する外国人の多くは若年層であり、彼らは新しい経験や挑戦に積極的な傾向があります。将来を見据えた職務技術の向上や、母国よりも高い賃金を求めて来日しているため、若くやる気のある人材が多いです。
特に体力勝負の面がある介護業務においては、若年層の人材は大きな戦力となるでしょう。
5. フルタイムで働いてもらえる
特定技能外国人は原則としてフルタイムの正社員として直接雇用しなければなりません。アルバイトやパート、派遣社員といった形での雇用は認められていません。週に定められた時間を通じて一定の生産性を確保しやすいです。連続的かつ安定した労働力を持つことで、業務のスムーズな進行が可能になります。
なお、別の在留資格を持つ外国人をアルバイトで雇用する際には働ける時間が週28時間に制限されます。しかし、特定技能外国人であればこういった制限もありません。外国人材にとっても、仕事により集中し、スキルや専門性を向上させる時間を確保できます。
十分なスキルや知識を持つフルタイムの正社員を雇用できれば、人材不足を効率よく補って生産性を高めることが可能です。
6. 対応できる業務の幅が広い
特定技能の労働者に任せることができる業務の内容には一定の制限があります。例えば、介護の分野では訪問系のサービスに従事するのは不可とされています。
とはいえ、一部の業務を除き幅広い業務に対応してもらえるため、特定技能外国人の雇用は人手不足に悩まされている現場にとって大きなメリットです。
技能実習は業務内容に多くの制限があるため、より多くの業務を任せたい場合には特定技能を選んだ方がよいでしょう。
7. 技能実習からの移行も可能
まずは技能実習生として受け入れ、その後特定技能の労働者に移行する雇用の方法もあります。この方法であれば、技能実習の段階で技術や知識、人柄などを十分に見極めることが可能です。
特定技能の労働者には通常、特定技能評価試験や日本語評価試験の受験が求められます。しかし、技能実習生として十分な技能や知識をもっていれば、規定の試験を受けずに特定技能に移行できます。
技能実習の期間制限は5年間ですが、特定技能に移行すればさらに5年にわたって在留できます。移行のタイミングによっては、最長で10年にわたって働いてもらえます。
8. 日本語でのコミュニケーションができる
技能実習生は入国までに日本語を勉強してはいますが、特に日本語能力試験を受けなければならないという決まりはありません。十分な日本語力が備わっておらず、業務を進める上で困る場面もあるかもしれません。
一方特定技能の外国人材は日本語評価試験などの各種試験を突破しています。日本語能力試験レベルN4以上が合格の条件であり、基本的な日本語を理解することが可能です。
読む
・基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。
聞く
・日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
※引用:認定の目安|日本語能力試験
試験では日本で生活するために必要な日本語に加え、業務で必要となる日本語の能力もチェックされます。この試験を突破している労働者であれば、入社直後から日本語で問題なくコミュニケーションを取ることが可能です。
9. 企業の海外進出の足がかりとなる
特定技能で外国人の技術者を多く雇用すれば、現場の多様化が起こりやすくなります。企業が今後海外進出を視野に入れている場合、外国人材の活躍は大きな足がかりとなるはずです。
また、特定技能人材は日本語と母国語を理解できるため、海外進出の際に交渉などの対応にあたってもらうこともできるでしょう。
10. 一度に多くの労働者を受け入れられる
特定技能の業種の多くでは、受け入れ人数の制限を設けていません。建設と介護の分野には一定の人数制限がありますが、事業所の規模や従業員数に応じて十分な人数の外国人を雇用できるので心配はいりません。
特定技能の活用は、深刻な人手不足が起きており今すぐに多くの人材を採用したい企業に向いています。
11. 特定技能2号に移行すれば終身雇用も可能
特定技能1号には5年間の期限があり、期間満了後には帰国が求められます。しかし、特定技能2号に移行できれば、期限の定めなく長期にわたって働いてもらうことが可能です。
現在、特定技能2号に移行できる業種は建設と造船・舶用業に限られています。これらの業種で終身雇用ができる人材が必要な場合には、特定技能2号への移行を検討するとよいでしょう。
特定技能で外国人材を雇用するデメリット
特定技能を活用して外国人の雇用を行うのには、多くのメリットがあります。その一方、費用面や手続きの面など、いくつかのデメリットも考えられます。
ここからは、特定技能を活用するときに考えられるデメリットを紹介していきます。
- 煩雑な手続きが必要となる
- 特定技能1号には期限が定められている
- 費用がかさんでしまうことがある
- 採用が難しい
- 労働者が転職を選ぶことがある
- 言語や文化の壁に悩まされることがある
1. 煩雑な手続きが必要となる
特定技能で外国人を雇用するときには、多くの手続きが求められます。手続きが煩雑で分かりにくいことから、外国人雇用を敬遠する事業所もあるほどです。
申請手続きがしにくいと感じるときは、登録支援機関への業務委託を選ぶのも一つの方法です。登録支援機関は各事業所に代わって、特定技能の登録申請や外国人材の出入国管理、契約など就労に関するトータルサポートを行っています。手厚いサポートを受けられる登録支援機関を選べば、負担なく外国人材を雇用できます。
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2. 特定技能1号には期限が定められている
特定技能1号の雇用期間は、更新を経て最長5年までです。5年が経過すると在留資格が失われるため、労働者は日本に住むことができなくなります。
現在、特定技能において2号を適用できるのは建設業と造船・舶用業に限られています。これ以外の多くの産業では、特定技能1号の条件で外国人を雇用しなければなりません。
そこで、技能実習の制度と組み合わせれば、最長10年まで働いてもらうことが可能となります。ただし、あくまで就労期間は制限されている点には注意しましょう。
3. 費用がかさんでしまうことがある
外国人材を技能実習の形で雇用した場合、報酬額はやや低めになるのが一般的です。しかし、特定技能で外国人材を雇用するときには、同様の業務にあたっている日本人従業員と同等またはそれ以上の給与を支払うよう定められています。
特定技能は十分なスキルや知識を持った労働者を雇い入れるシステムとなっているため、技能実習に比べるとその報酬額はどうしても高くなります。
特定技能の外国人材を雇う際には人材紹介会社を利用するケースも多いです。人材紹介のサービスを受けるときには、労働者の年収の20~30%程度を手数料として支払うことになります。他に、登録支援機関への支援費なども求められます。
結果として、特定技能を活用した雇用によって採用コストや人件費が跳ね上がってしまうおそれもあります。
4. 採用が難しい
特定技能人材には、特定技能評価試験や日本語能力試験など一定の試験が課せられます。これらの試験に合格していない外国人を特定技能人材として雇用できません。
現状、特定技能評価試験や日本語能力試験を実施している国は限られます。そのため、試験無しで雇用できる技能実習と比べると、やはり労働者の確保は難しくなります。
企業が独自に外国人材を探すのが難しいときには、人材紹介会社を上手に活用しましょう。外国人材の採用に特化している紹介会社を選べば、優秀な人材と出会う機会を増やすことができます。
5. 労働者が転職を選ぶことがある
技能実習の場合には、実習先の倒産などやむを得ない場合以外に転職できません。しかし、特定技能で在留資格を得た労働者は、同一の業界内で自由に転職することが認められています。
よりよい条件の事業所がある場合には、せっかく雇用した労働者が転職してしまう可能性も十分に考えられます。もちろん、十分な報酬や福利厚生を用意しサポートを行っていれば、労働者が転職してしまうリスクはほとんどありません。
6. 言語や文化の壁に悩まされることがある
特定技能外国人として働くためには、日本語能力の試験に合格する必要があります。そのため、雇用してすぐの段階でもある程度日本語でのコミュニケーションを円滑にとることができます。とはいえ、流暢な日本語を操れる労働者はそれほど多くないでしょう。
また、それぞれの国には独自の文化があります。さらに労働者が信仰を持っているケースもあるため、一緒に働く中で文化や宗教の壁を感じることもあるかもしれません。
特定技能1号と2号の違い
特定技能には1号と2号があり、それぞれ受け入れの条件が異なります。ここからは、1号と2号の条件の違いを確認していきましょう。
特定技能1号
特定技能1号は、該当する特定産業分野における相当程度の知識やスキルを持つ外国人を雇用するための在留資格です。特定技能の14種の分野において、特定技能1号の制度を活用できます。
特定技能1号はいわば、就労ビザなのでさまざまな国籍の方が利用することが可能です。しかし、特定技能評価試験を実施している国が限られていることから、特定技能1号の在留資格で来日する外国人の出身国も一部に限られます。
2022年の時点で、特定技能1号の2国間協定を締結し試験を実施している国は以下のとおりです。
- インドネシア
- ウズベキスタン
- カンボジア
- スリランカ
- タイ
- ネパール
- パキスタン
- バングラデシュ
- フィリピン
- ベトナム
- ミャンマー
- モンゴル
特定技能1号の対象となるのは、就業後すぐに一定の業務にあたれるだけの技術を持つ労働者です。特定技能1号の在留資格で来日するにあたっては日本語スキルを判定する試験や、仕事に関する知識や経験を問う試験に合格する必要があります。
特定技能1号の在留資格で来日した場合の在留期間は、1年、6カ月、4カ月ごとの更新を経て通算5年までに設定されています。期間が満了した後には在留資格がなくなるため、日本に滞在できなくなります。
また、特定技能1号は原則として家族の帯同は認められません。
特定技能2号
特定技能2号は、特定技能1号の修了者が次の段階として選べる在留資格です。特定技能2号が認められるのは、その分野において十分に熟練した技術を有している労働者に限られます。特定技能2号の場合、3年、1年または6カ月ごとに更新をすれば、永続的に日本に滞在できます。実質的に日本の永住者となり、長期間にわたって日本の産業に携わってもらうことが可能です。
特定技能の制度が施行された2019年には、特定技能2号に移行できるのは建設業、造船・舶用業の2分野に限られていました。しかし、法務省は2021年に特定技能2号の拡張を検討する考えを示しています。2022年度を目処に、他の産業分野においても特定技能2号への移行が可能となる見通しです。
特定技能制度と技能実習生の違いについては、別記事「【比較表】特定技能と技能実習の11個の違いを解説」でも解説しています。参考にしてください。
特定技能1号外国人材への支援について
特定技能外国人を採用する方法はいくつか考えられます。技能実習生を受け入れているときには、十分な技術を身につけた上で特定技能に移行してもらう方法を選ぶことも可能です。また、留学生アルバイトに対して技能試験や日本語試験を勧め、合格後に社員として雇用するケースもあります。
しかし、多くの場合は外国にいる技術者を特定技能外国人として採用します。どのような場合であっても、特定技能1号で外国人材を雇用するときには、企業や事業所が一定の支援を行うことが求められています。
1号特定技能外国人に対する支援の内容には以下のようなものがあります。
- 外国人に対する入国前の生活ガイダンスの事前提供
- 入国時の空港等への出迎え、帰国時の空港等への見送り
- 住居確保のため、保証人となるなど生活に必要な支援や契約の実施
- 外国人に対する在留中の生活オリエンテーションの実施
- 生活に必要となる日本語習得の支援
- 外国人が行うべき各種行政手続きの情報提供、公的手続きに同行するなどの支援
- 外国人からの相談や苦情への対応
- 外国人と日本人とのコミュニケーション促進に関わる支援
- 転職の支援
- 定期的な面談や、必要に応じての行政機関への通報
参考:特定技能ガイドブック|法務省
これらの支援は、外国人材が不安なく日本で仕事をするために必要です。外国人材を受け入れる企業が丁寧なサポートを行うことは、企業と労働者の双方に大きなメリットをもたらします。
初めての外国人材採用では、登録支援機関への依頼が必須
特定技能の外国人材を雇用するときには支援体制を構築した上で支援計画書を作成し、提出する必要があります。しかし、支援計画の作成や実際の支援には多くの手間がかかります。多くの外国人材を雇用したいと考えたものの、支援のコストや負担を考え雇用を見送ってしまう例もあるかもしれません。
自社での支援が難しい場合には、登録支援機関への委託する方法を選択できます。特に、初めて外国人を受け入れる場合や企業に過去2年にわたって外国人が在籍していない場合には、必ず登録支援機関に委託しなければなりません。
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特定技能で外国人を雇用するメリットはたくさんある
在留資格の特定技能とは、外国人を技術者として雇用できる制度のことです。特定技能には即戦力となる外国人を雇用でき、人手不足の解消を実現できる大きなメリットがあります。
一方で、特定技能外国人の雇用には手続きの難しさや費用面などいくつかのデメリットも考えられます。
特定技能外国人の受け入れは新型コロナウイルス感染症の影響もあり、当初の見込み通りに進んでいないのが現状です。とはいえ、渡航制限が緩和された2022年以降には特定技能外国人の受け入れ数も少しずつ増加していくと期待されています。