ベトナム人雇用のメリットと注意するべきポイント

外国人労働者 2022.10.14

ベトナム人雇用のメリットと注意するべきポイント

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日本で働く外国人のうち、労働者数が多いのがベトナム人です。ベトナム人は若手人材やITスキルが高い人材が多く、IT企業を中心として多くの企業が受け入れてきました。

 

また、2019年4月から特定技能制度がスタートするなど、日本における制度面でもベトナム人を含めた外国人労働者を受け入れやすくなっています。[注1]

一方で、コミュニケーション面の問題や仕事に対する考え方の違いなど、ベトナム人の雇用にはさまざまな課題が存在するのも実状です。

 

本記事では、ベトナム人雇用のメリットや受入先の企業が注意すべきポイントを解説します。

 

[注1]外務省「新たな外国人材の受入れ 在留資格 特定技能」

ベトナム人を雇用する3つのメリット

ベトナム人を雇用するメリットは主に3つあります。

少子高齢化が進む日本と違い、ベトナムは生産年齢人口(15~64歳)の割合が大きく、若手人材を確保しやすいというメリットがあります。

 

またベトナムはIT教育に力を入れているため、ITスキルが高い人材も豊富です。従業員の年齢層を若くしたいと考える企業や、ITスキルの高い人材を求める企業は、ベトナム人の雇用も検討しましょう。

若手人材を確保しやすい

ベトナムの年齢別人口構成(2018年)を見ると、総人口9,554万人のうち生産年齢人口の割合が69.6%を占めています。[注2]少子高齢化が急激に進行し、生産年齢人口が60%を下回る日本と比較して、ベトナムには若手人材が多いのが特徴です。将来的には老年人口(65歳以上)の割合が4割を超えるといわれる中で、日本企業は若手人材の確保が急務となっています。[注3]

 

最近では最長5年まで在留期間を更新できる外国人技能実習生制度に加えて、技能実習後に永住権が認められる特定技能制度が創設されました。ベトナム人をはじめとした外国人労働者を自社の将来を担う若手人材として活用できるようになったことから、ベトナム人雇用に意欲を示す企業が増えています。

 

[注2] 経済産業省.「医療国際展開カントリーレポート新興国等のヘルスケア市場環境に関する基本情報ベトナム編」

[注3]内閣府.「中期答申、経済社会の構造変化等について」

ITスキルが高い人材が多い

ベトナムでは直近、新しい教育カリキュラムが取り入れられ、IT分野の教育が強化されています。

例えば、小学校でプログラミング教育が必修化された日本と同様に、ベトナムの小学校でもパソコン教育が行われています。

 

またベトナムは発展途上国の中でも識字率が高く、教育やスキルアップに熱心な国民性でも知られます。若手人材を確保しやすいことに加えて、ITスキルが高い人材が多いのもベトナム人を採用するメリットの一つです。ベトナム国内での人件費の安さから、ベトナム人を雇用するのではなく、オフショア開発の拠点を設立する企業も少なくありません。

 

日本人への好感度が高い人が多い

1973年9月に外交関係を結んでから、日本とベトナムは約40年の間、国交を樹立してきました。政府開発援助(ODA)などを通じ、日本が経済援助を続けてきた結果、ベトナム人には親日感情を抱く人が比較的多いのも特徴です。

 

実際に株式会社電通の「ジャパンブランド調査 2018」によると、日本に対する好意度がもっとも高いのは台湾、タイ、フィリピン、ベトナムの4カ国です。[注4]

 

  • 日本に対する好意度ランキングトップ10

順位

1~4位

台湾、タイ、フィリピン、ベトナム

5位

マレーシア

6位

香港

7~8位

インド、シンガポール

9位

インドネシア

10位

イタリア

 

このようにベトナム人には日本に対して好感や親しみを持つ人が多く、日本人労働者との親和性が高いのが特徴です。また、インドネシアなどのムスリムが多い国家と違い、ベトナム人は無宗教の割合が多くなっています。日本人と精神的な面での風土が比較的近いことも、ベトナム人を雇用するメリットの一つでしょう。

 

[注4]株式会社電通「ジャパンブランド調査2018」

 

ベトナム人を雇用する際の4つの注意点

ベトナム人を雇用する場合は、日本との価値観や商習慣の違いを考慮することが大切です。日本人労働者と比較して、ベトナム人労働者には安全や衛生に関する意識が低い人が多く、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)をはじめとした職場管理の徹底が必要です。

 

またベトナム人と良好な人間関係を築くためには、コミュニケーションの問題を解決する必要もあります。ベトナム人を雇用する際の注意点を4つ紹介します。

コミュニケーションの問題を解決する必要がある

ベトナム人労働者に限らず、外国人労働者を受け入れるときの課題がコミュニケーションです。

在留資格によっては、ほとんど日本語が話せないベトナム人労働者もいます。特に現地で採用したベトナム人の場合、日本人労働者と円滑にコミュニケーションをとれないケースがほとんどです。

そのため、ベトナム人労働者を現地採用する場合は、日本語試験の資格取得を支援する制度を設けるなど、入社後に語学を学べる環境を用意する必要があります。

 

一方、在日留学生の場合は、語学学習を目的として日本を訪れるケースも少なくありません。また特定技能制度を利用しているベトナム人労働者も、特定技能ビザの要件として一定の日本語能力が求められます。しかし来日したてでは、複雑なコミュニケーションがとれない人も多いため、なるべくわかりやすい言葉で話しかけることが大切です。

ベトナム人でコミュニティを形成することが多い

ベトナム人は一人で過ごすよりも、同じベトナム人でコミュニティを形成することを好婿とが多いです。

複数のベトナム人を雇用する場合は、なるべくまとまって行動できるように配慮することで、居心地のいい職場環境づくりにつながります。

 

また、ベトナム人はコミュニティ内で活発に情報交換を行います。給与や待遇面で不公平があった場合は、ベトナム人コミュニティの中ですぐに情報が広がるため、人事評価制度の公平性を保つことが大切です。

その他、まとまって行動することでベトナム人労働者が他の従業員や近隣住民の迷惑にならないよう、必要に応じて注意するようにしましょう。例えば以下の点を確認してください。

 

  • 職場での私語が増えていないか
  • 複数人で仕事をしているとき、緊張感がなくなっていないか
  • 社宅や公共交通機関で、騒音などの迷惑行為をしていないか
  • 並列走行や歩道を塞ぐなど、交通ルールに違反していないか

安全や衛生に関する意識が低い

日本人労働者と比較して、ベトナム人労働者は安全や衛生に関する意識が低いという特徴があります。特に整理整頓や身だしなみに関して、以下のような5Sの考え方があるわけではありません。

 

整理

いらないものはきちんと捨てる

整頓

使うものは順序よく並べて保管する

清掃

仕事場所を清掃し、きれいな状態を維持する

清潔

身だしなみをチェックし、衛生状態を保つ

しつけ

4つのSを忘れないように習慣化する

 

ベトナム人労働者が多い工場や建設現場などでは、少しの油断が労働災害につながる恐れもあります。定期的にベトナム人向けの労働安全衛生教育を行うなど、ベトナム人が安心して働くための仕組みづくりが大切です。

仕事に対する考え方が日本人と違う

日本人とベトナム人では、仕事に対する考え方が違います。特に大きな違いがみられるのが、昼休み、残業、キャリアアップの3点で、具体的には以下のような傾向があります。

 

  • ベトナム企業は昼休みが長く、2時間を超える場合もある
  • ベトナム人は残業をほとんどせず、残業する場合は高額な割増賃金が支払われる
  • ベトナムでは成果主義を好む人が多く、昇給やキャリアアップを重要視する

 

日本企業とベトナム企業の大きな違いの一つが昼休みの長さです。

ベトナムでは昼休みが2時間の企業もあるため、日本企業の昼休みの短さにとまどう人もいます。

 

また、残業に対する考え方も違います。一般的なベトナム人は仕事よりも家庭を重視するため、ほとんど残業をしません。やむを得ず残業をする場合も高額な割増賃金が支払われます。残業が多い企業や、サービス残業が常態化している企業の場合、ベトナム人労働者がすぐに退職してしまう可能性があるので注意しましょう。昔ながらの年功序列制度を採用する企業もベトナム人との相性があまり良くありません。ベトナム人は成果主義を好む人が多く、昇給やキャリアアップを目指して積極的に転職します。ベトナム人を雇用する場合は、将来的なキャリアパスを丁寧に説明することが大切です。

日本で働くベトナム人が急増している理由

日本国内の外国人労働者でベトナム人の数は非常に多いです。ではなぜ、日本で働くベトナム人が急増しているのでしょうか。

 

その一つの理由として、ベトナムと日本の給与水準の違いが挙げられます。また、特定技能制度が設立されるなど、在日ベトナム人の在留資格が新たに増えたことも影響しています。

 

この項目では日本で働くベトナム人の現状や、主な在留資格の内訳、在日ベトナム人の割合が多い産業を紹介します。

外国人労働者の中で在日ベトナム人が最多に

日本で働く外国人労働者の総数は1,727,221人(2021年10月末)で、2007年に調査がスタートしてから過去最高を更新しました。[注5]その中でも、もっとも割合が多いのがベトナム人です。以下の表は、国籍別にみた外国人労働者の内訳です。

 

国籍

労働者数

全国籍計

1,727,221人

中国

(香港、マカオを含む)

397,084人

韓国

67,638人

フィリピン

191,083人

ベトナム

453,344人

ネパール

98,260人

インドネシア

52,810人

ブラジル

134,977人

ペルー

31,381人

G7等

78,621人

その他

222,023人

 

ベトナム人労働者の人数は453,344人と、全体の26.2%を占めています。なぜ日本で働くベトナム人労働者が急増しているのでしょうか。[注6]

 

その理由の一つとして、日本の給与水準がベトナムよりも大幅に高い点が挙げられます。日本貿易振興機構(ジェトロ)の調べによると、ベトナムの一人当たり月間平均所得は約25,380円(1ドン0.006円)です。都市部に限定しても、平均月収は約33,228円にとどまります。[注7]

 

一方、国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の給与取得者の平均給与は約433万円で、月収に換算すると約36万円です。[注8]

 

このように日本とベトナムの給与水準に大きな差があることから、日本で働くベトナム人の増加につながっています。

 

[注5][注6]厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)」

 

[注7]日本貿易振興機構(ジェトロ)「ジェトロ「ビジネス短信」」

 

[注8]国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」

 

在日ベトナム人の在留資格の内訳

日本で働くベトナム人が多いことのもうひとつの理由は、外国人技能実習生制度をはじめとした在留資格の取得要件が緩和されたことにあります。実際に外国人労働者の内訳を在留資格別にみると、ベトナム人の技能実習生は202,218人で全体の中でも非常に多い数となっています。[注9]

 

日本企業にとっても、フルタイムで働く若手人材を確保できる外国人技能実習生制度は大きなメリットがあります。

 

国籍

総数

①専門的・技術的分野の在留資格

②特定活動

③技能実習

④資格外活動

⑤身分に基づく在留資格

⑥不明

全国籍計

1,727,221人

394,509人

65,928人

351,788人

334,603人

580,328人

65人

ベトナム

453,344人

83,663人

27,998人

202,218人

122,005人

17,457人

3人

 

また、2019年4月に特定技能制度がスタートし、新たな在留資格が認められたことも在日ベトナム人が増加した要因です。在日ベトナム人と特定技能制度の関わりについては、後の項目で詳しく解説します。

 

 

[注9]厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)」

在日ベトナム人が働く産業の内訳

ベトナム人労働者は、どのような業種で受け入れられているのでしょうか。厚生労働省の調べによると、もっとも多くのベトナム人が働く業種は製造業で、全体の35.7%を占めています。その他の産業別にみた外国人労働者数の内訳は以下のとおりです。[注10]ベトナム人労働者は留学生のアルバイト(資格外活動)の割合が比較的多いことから、飲食サービス業や小売業、その他のサービス業などの割合も大きくなっています。

国籍

全産業計

うち建設業

うち製造業

うち情報通信業

うち卸売業、小売業

うち宿泊業、飲食サービス業

うち教育、学習支援業

うち医療、福祉

うちサービス業(他に分類されないもの)

全国籍計

1,727,221人

110,018人

465,729人

70,608人

228,998人

203,492人

73,506人

57,788人

282,127人

ベトナム

453,344人

57,674人

161,869人

5,133人

50,168人

52,445人

1,728人

12,722人

63,522人

 

[注10]厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)」

 

 

ベトナム人の雇用に役立つ特定技能制度

ベトナム人の雇用拡大につながった要因の一つが、2019年4月からスタートした特定技能制度です。実際に特定技能の在留資格で働くベトナム人の割合は中国やフィリピン、インドネシアよりも多く、全ての国籍や地域の中で最多となっています。

 

永住権の取得を目指すベトナム人も多く、ベトナム人を雇う場合は特定技能制度を利用するのがおすすめです。特定技能制度の在留資格を満たす条件や、受入企業に求められる基準を解説します。

特定技能制度の在留資格を満たす条件

特定技能ビザといっても、特定技能1号と特定技能2号の2種類があります。それぞれの在留資格を満たす要件は以下のとおりです。[注11]

 

 

特定技能1号のポイント

特定技能2号のポイント

在留期間

1年、6カ月又は4カ月ごとの更新、通算で上限5年まで

3年、1年又は6カ月ごとの更新

技能水準

試験等で確認

(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除)

試験等で確認

日本語能力水準

生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認

(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除)

試験等での確認は不要

家族の帯同

基本的に認められない

要件を満たせば可能(配偶者、子)

受入れ機関又は登録支援機関による支援

対象

対象外

 

[注11] 国際人材協力機構「在留資格「特定技能」とは」

 

特定技能外国人の受入れ機関の義務

また特定技能外国人を受け入れる企業は、以下の3つの義務を負うことを把握しておきましょう。[注12]

 

  • 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行すること
  • 外国人への支援を適切に実施すること
  • 出入国在留管理庁への各種届出を行うこと

 

ベトナム人労働者に報酬をきちんと支払うのはもちろん、報酬額は日本人労働者と同等に扱うなど、さまざまな要件があります。もし受入機関の義務を果たさない場合、外国人労働者の受け入れができなくなるほか、出入国在留管理庁の指導や改善命令が行われる可能性があります。

 

[注12] 国際人材協力機構「在留資格「特定技能」とは」

【まとめ】

ベトナム人を雇用するメリットや注意点を知ろう

ベトナム人を雇用すれば、若手人材やITスキルが高い人材を確保できる可能性が高いでしょう。特定技能制度をはじめとして、ベトナム人を受け入れる制度が充実してきていることも日本企業にとっては追い風です。

 

一方でベトナム人を雇用する際は、日本の価値観や商習慣との違いを考慮する必要があります。

日本人労働者とのコミュニケーションの問題や、衛生管理に関する意識の低さなど、ベトナム人雇用にはいくつか課題があるのも実状です。ベトナム人を受け入れる場合は、ベトナム人にとって働きやすい職場管理づくりにも取り組みましょう。

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