【解説】特定技能の試験の制度や内容とは?

特定技能 2023.08.11

【解説】特定技能の試験の制度や内容とは?

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外国人が日本に来て就労するための一つの方法が特定技能制度を利用することです。特定技能制度は在留資格の一つであり、外国人が利用して就労しやすい制度となっています。

 

当記事ではそもそも特定技能制度とはどんなものなのか、概要や特定技能試験の内容、合格率、特定技能制度の活用方法についてなどを解説します。

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在留資格「特定技能」とは?

在留資格としての特定技能は、2019年4月に新しく創設された資格で、特に人手不足が深刻であると考えられる、特定産業分野で働く外国人を受け入れるためのものです。

 

労働力を確保するために創設された在留資格であることから、これまでの就労ビザよりも幅広い範囲の業務を行うことができるようになっています。

特定技能制度の概要

特定技能制度の背景にあるのは深刻な人手不足です。

厚生労働省の資料によれば、日本の労働力人口は2025年までに6,673万人(※)に落ち込むと予想されています。

 

全国的に人手不足が深刻化していく中で、外国人労働者を受け入れて減少傾向にある労働力を補う試みがなされています。

 

その一環として導入されたのが特定技能制度であり、政府は2019年から2023年間での5年間で最大約34万人の外国人労働者を受け入れる(※)としています。

 

※出典:令和2年度版 厚生労働白書 p.15|厚生労働省

 

 

※出典:在留資格「特定技能」について p.14|出入国在留管理庁

 

特定技能外国人を受け入れる12の分野

特定技能外国人を受け入れることで多くの労働力を確保する特定技能ですが、どのような分野でも働けるわけではありません。日本においてとくに人手不足が深刻な分野に限って特定技能外国人を受け入れることになっており、即戦力で働ける外国人が必要とされています。

 

現在、特定技能外国人を受け入れる分野は12あります。

12の職種とは介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造産業、建設、造船・舶用工業、航空、宿泊業、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業です。

 

素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業は2022年4月の再編によって統合され、特定技能外国人を受け入れる分野が14から12に変わっています。(※)

 

※出典:特定技能「素形材産業分野」、「産業機械製造業分野」及び「電気・電子情報関連産業分野」の統合等について|出入国在留管理庁

 

特定技能制度の種類

特定技能には1号と2号という種類があります。1号の修了者が試験に合格して2号を取得するという流れです。特定技能1号の外国人の在留期間は最長5年(※)となっており、それ以上日本に滞在することができません。

 

しかし特定技能1号を修了して2号に合格すると、在留資格を更新することが可能となる上に、在留資格の更新回数に制限がなくなります。

特定技能2号の外国人であれば、在留資格を更新し続けて日本にずっと滞在し、経済活動に貢献し続けてくれる可能性もあるのです。

 

ただし、特定技能1号の受け入れ分野が12だったのに対し、特定技能2号の外国人は造船・舶用工業と建設業でしか働けません。

特定技能1号の外国人は、最長5年の在留期間を終えると、造船・舶用工業と建設業の特定技能2号を取得したり、別の在留資格を取得したりしないと日本に留まれないことになります。

 

※出典:制度の概要|外務省

 

受入れ機関と登録支援機関

特定技能制度を知る上で、受入れ機関と登録支援機関に関しては必ず把握しておきましょう。

受入れ機関とは、特定技能外国人を実際に雇用する企業や個人事業主のことを指します。どのような企業や個人事業主でも特定技能外国人を受け入れられるわけではありません。

 

受入れ機関になるためには、いくつかの基準をクリアしている必要があります。

たとえば、外国人と結ぶ雇用契約が適切でなければなりません。

特定技能外国人を雇用する場合には、基本的に直接雇用かつ日本人従業員と同等あるいはそれ以上の待遇であることが求められます。

 

さらに過去5年以内に出入国・労働法令違反がないこと、外国人を支援する計画を立てて履行すること、出入国在留管理庁への各種届出を行う事なども含まれます。

加えて、特定技能外国人を支援する体制が整っていなければなりません。

 

とくに言語の面で問題を抱える外国人は少なくないので、可能であれば英語か特定技能外国人の母語が話せる従業員がいることが望ましいでしょう。

 

一方、登録支援機関も重要な役割を果たします。

登録支援機関とは、受入れ機関から特定技能外国人への支援を代行する者のこと。

 

団体や弁護士などが、出入国在留管理庁長官の登録を受けることで登録支援機関となれます。登録支援機関は特定技能外国人を支援し、空港などへの送迎や住居を確保するための支援、出入国在留管理庁への各種届出等を適切に行わなければなりません。

特定技能外国人に対する支援

特定技能外国人に対しては、受入れ機関や登録支援機関が支援を行うことが義務付けられています。特定技能外国人を雇用する場合には、義務的支援が多く定められているので、担当者を任命するなどして適切に対応しなければなりません。

 

たとえば、特定技能外国人に対しては、入国前の生活ガイダンスを行います。生活ガイダンスは特定技能外国人本人が理解できる言語を用いて行う必要があるでしょう。

 

その他にも在留中の生活オリエンテーション、外国人からの苦情や相談への対応、各種行政手続きについての情報提供や付き添いなども本人が理解できる言語を話せる人が行う必要があります。

 

特定技能外国人が自分の住居を確保できるように、情報を提供したり、内見に付き添ったりすることも重要な支援の一つです。

 

連帯保証人が必要な場合には、受入れ機関もしくは登録支援機関が連帯保証人になるか、保証会社をあっせんします。特定技能外国人と定期的な面談をしたり、必要に応じて行政機関へ通報したりすることも支援の一部です。

特定技能と技能実習の違い

特定技能とよく似た在留資格のなかに、技能実習があります。

しかし、特定技能と技能実習には多くの違いがあるので注意が必要です。

 

技能実習制度は、日本の技術や知識を発展途上国へ移転し「人づくり」に寄与することを目的に創設されました。外国人が日本に来て学び、その技術や知識を母国に帰って活かしてもらうものとなります。

 

一方、特定技能は海外から労働力を確保する目的なので、制度の目的がまったく異なります。

さらに技能実習は国際貢献の一環であるため受け入れ可能な国が限られており、現在は東南アジアを中心に14カ国が対象となっています。(※)

 

一方で特定技能はごく一部を除き、国籍にかかわりなく誰でも取得することが可能です。さらに、令和2年より短期滞在の在留資格でも受験が可能となったため、受験を目的として来日し、特定技能の在留資格を取得することができるようになりました。受験資格の拡大によって、さらに多くの外国人が日本に来て特定技能の在留資格を取得すると考えられます。

 

※出典:外国政府認定送出機関一覧|OTIT 外国人技能実習機構

 

特定技能外国人を雇用するメリット・デメリット

特定技能の在留資格を持っている外国人を雇用する企業は年々増えています。

しかし、外国人を雇用することに抵抗を持つ事業主も少なくありません。実際に特定技能外国人を雇用することで、どんなことが起こるのでしょうか。

 

特定技能外国人を雇用するメリットとデメリットをそれぞれご紹介します。

 

特定技能外国人を雇用するメリット4つ

特定技能外国人を雇用するメリットには以下の4つが挙げられます。

1. 人材不足の解消

人材不足が深刻になっている分野の企業にとって、特定技能外国人は人手不足を解消する助けになり得ます。特定技能の在留資格を得ている外国人は10代から20代の若者が多く、体力もあり将来性もある人材を雇用できる機会です。

すぐに人材不足が完全に解消しないとしても、徐々に人材を雇用・育成するきっかけとなるでしょう

2. 即戦力の確保

特定技能は、試験に合格しなければ取得できません。したがって、特定技能外国人は日本語も技術面でもある程度のレベルを満たしている人材と考えられます。

 

分野にもよりますが試験の合格率が低い、狭き門を通って在留資格を取得する外国人も少なくありません。高い技術や知識を持っている人材を雇用できるのは大きな魅力です。

3. 短期間で転職するリスクが少ない

特定技能外国人は短期間で転職してしまうリスクが少ないという点で、日本人従業員よりも魅力的な人材です。

 

特定技能外国人は転職が認められているものの、同じ分野の範囲内という条件が付いています。日本人であれば、業種や分野をまたいで転職することができますが、特定技能外国人は日本人よりも選択肢が少ないため、短期間で離職してしまうリスクがあまりありません。

4.フルタイムで長期の雇用が可能

特定技能以外の在留資格を持つ外国人の場合、勤務時間に制限が設けられている場合が少なくありません。

しかし特定技能外国人であれば直接雇用して、フルタイムでの勤務が可能です。さらに特定技能2号に移行できれば、5年以上の長期にわたる雇用も可能となります。

特定技能外国人を雇用するデメリット

特定技能外国人を雇用する際には、デメリットについても知っておかなければなりません。

 

特定技能外国人を雇用する大きなデメリットは、手続きや支援しなければならない事が多い点です。出入国在留管理庁への申請はもちろんのこと、分野によっては受け入れる外国人の母国の機関とやり取りを行わなければいけません。

 

登録支援機関への依頼料を支払うか、もしくは自社の従業員の誰かが住居の確保やインフラに関する手続きに付き添ってあげる必要も出てくるでしょう。

 

さらに特定技能1号の外国人の場合、在留資格が変更されなければ最長5年で母国に帰らなければなりません。長期にわたって雇用したい企業や個人事業主の方にとっては、やや不便な部分もあります。

特定技能の取得に必要な試験

特定技能の在留資格は、ごく一部を除きどのような国籍の方も取得可能です。しかし、どのような人でも取得できるわけではなく、基本的には日本語試験と技能試験の2つに合格しなければなりません。

 

この項目では特定技能外国人になるために、必要な試験に関する内容をご紹介していきます。

特定技能外国人が就労するためには?

特定技能外国人が日本で就労する場合には、以下に記載するような3つのパターンがあります。

  1. すでに特定技能外国人として働いており、同じ分野で転職したい人
  2. すでに特定技能外国人として働いており、違う分野に転職したい人
  3. 技能実習から特定技能へ移行したい人

 

 

 上記の2と3どちらかに該当する方に関しては、特定技能を習得するために、試験を受けなければなりません。

試験を受けた後、受け入れ先の企業と雇用契約を結び、在留資格変更申請もしくは在留資格認定証明書交付申請を行い、許可が下りれば就労が可能となります。

日本語試験

特定技能の在留資格を取得するためには、まず生活や業務に必要な日本語能力を有していることを証明しなければなりません。

 

日本語試験としては、日本語能力試験(JLPT)と国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)のどちらかを受験します。日本語能力試験と国際交流基金日本語基礎テストには違いがあるので、特定技能の試験を受ける場合にはその違いを理解しておく必要があるでしょう。

 

日本語基礎テストは、問題文がすべて日本語で書かれています。マークシート形式で、N1からN5までのレベルに分かれています。特定技能ではN4もしくはN5レベルの日本語能力が求められることを覚えておきましょう。

N4に合格した場合、基本的な日本語を理解することができると見なされます。身近な文章を読んで理解できたり、ややゆっくり話されるレベルであれば内容をほぼ理解できたりする状態です。申込期間がやや短めのため、早めにエントリーしておくとよいでしょう。

 

国際交流基金日本語基礎テストは、より会話力を重視した日本語能力の有無を測定する試験です。A1、A2、B1、B2、C1、C2でレベル分けされており、就労のためにはA2レベルが必要とされます。パソコンで行うCBT方式で、日本語能力試験よりも頻繁に行われています。

技能評価試験

日本語の能力を測る問題に加え、各分野の技能評価試験にもパスしなければ、特定技能は取得できません。技能評価試験は分野によって内容が大きく異なります。受験資格は拡大され、短期滞在でも技能評価試験を受けられるようになっているものの、試験の難易度は変更されていません。

 

たとえば、建設業における技能評価試験は、60分で30問を解く学科試験と、職種ごとに定められる実技試験とがあります。左官や電気通信、鉄筋継手、とびなどの職種に分かれており、それぞれに実技試験が実施されるでしょう。他にも外食業では、学科試験で衛生管理・飲食物調理・接客全般が30問100点満点で問われ、判断試験と計画立案という2つの分野の実技試験が行われます。

 

分野によって実技試験の内容は大きく変わるので、特定技能を取得しようと思っている外国人は、真剣に勉強しなければなりません。

合格状況

特定技能の試験内容は分野によって大きく異なります。たとえば、日本語試験は非漢字圏の国から来て受験する外国人にとってはかなり難しいと考えられるでしょう。

実際、2020年12月に実施された日本語能力試験のN2認定率は55.9%(※)、翌2021年7月、8月に行われた国際交流基金日本語基礎テストのA2認定率は39.4%(※)とそれほど高くありません。

 

一方で、技能試験の合格率は分野によってかなり差が出ています。2021年のデータでは、製造3分野での合格率は4.9〜33.3%と全体的に低めでした。(※)

とくに合格率が高いのは農業分野や自動車整備の分野です。(※)

 

特定技能の在留資格を得ている外国人が技能実習から特定技能へ移行するケースも少なくありません。短期滞在などの在留資格で来日して試験を受けて特定技能を取得するというケースよりも、技能実習生として来日して技術を学び、特定技能に切り替えるケースが多いようです。

 

※出典:2020(令和2)年 第2回(12月)データ|日本語能力試験 JLPT

 

 

※出典:国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)2021 年 7 月、8 月テスト 実施概要報告|国際交流基金  日本語基礎テスト

 

 

※出典:令和3年度製造分野特定技能 1 号評価試験実施状況報告書【製造3分野】 p.6〜8|経済産業省

 

 

※出典:令和2年度農業技能測定試験実施状況報告書【農業分野】 p.5〜14|農林水産省

 

 

※出典:令和2年度自動車整備分野特定技能評価試験実施状況報告書【自動車整備分野】 p.5〜9|国土交通省

【まとめ】

 

特定技能の制度や試験の内容によく通じておこう

特定技能の制度は人材不足に悩んでいる企業や個人事業主の方にとって多くのメリットがあります。即戦力を獲得できるチャンスなので、積極的に活用しましょう。

 

いつ試験が行われるのか、どのような試験なのかを理解しておけば、今雇用している外国人の技能実習生がさらにステップアップするのを助けてあげられるかもしれません。特定技能は日本企業にとっても日本で働きたい外国人にとってもメリットのある制度なのです。

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