外国人雇用状況届出書とは?対象・提出方法・注意点まで解説!
介護外国人労働者 2025.04.13

目次
近年、日本で働く外国人労働者の数は増加傾向にあり、企業が外国人を雇用する機会も増えています。こうした状況の中で重要となるのが、「外国人雇用状況届出書」の提出です。外国人を新たに雇い入れたり、雇用していた外国人が離職したりする際には、厚生労働大臣への届出が法律で義務付けられており、違反すると罰則の対象となる場合もあります。
本記事では、外国人雇用状況届出書の制度概要から、対象となる外国人の範囲、提出方法と期限、注意すべき実務上のポイントまでを徹底解説します。さらに、在留資格の確認や社会保険の手続きなど、外国人労働者を雇用する際に必要な対応も具体的に紹介。適切な届出と労務管理により、安心して外国人雇用を進めるための知識を身につけましょう。
外国人雇用状況届出書とは?
外国人雇用状況届出書とは、事業主が外国人労働者を新たに雇い入れた場合や、雇用していた外国人が離職した場合に、厚生労働大臣へ提出しなければならない届出書類のことです。これは「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定および職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」に基づいて義務付けられており、すべての事業主が対象となります。
届出の目的は、「外国人労働者の雇用実態」の正確な把握です。これにより、国は労働市場の整備や不法就労の防止、さらには離職後の再就職支援など、外国人労働者の雇用環境を改善するための政策を効果的に実施することが可能になります。
なお、届出を怠ったり、虚偽の内容を届け出た場合は、30万円以下の罰金が科される可能性があるため注意が必要です。また、企業だけでなく法人の代表者や人事担当者個人にも罰則が及ぶ場合があります。
提出対象となる外国人労働者とその基準
外国人雇用状況届出書の提出が求められる対象は、在留資格を持って日本国内で就労するすべての外国人労働者です。ただし、「外交」「公用」などの公的な立場にある者や、「特別永住者」は対象外とされています。
届出書の提出にあたっては、雇用保険に加入するか否かによって、届け出る書類の種類が異なります。雇用保険の被保険者となる外国人については、「雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)」または「雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号)」の提出がそのまま届出となります。一方、雇用保険の対象とならない外国人に対しては、別途「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」の提出が必要です。
なお、正社員に限らず、パートタイマーやアルバイト、短期雇用契約者であっても、外国人である限り対象となります。在籍期間の長短を問わず、雇い入れた事実や離職した事実があれば、速やかに届出を行う義務があります。
外国人雇用状況届出書の提出方法と期限
外国人雇用状況届出書は、外国人労働者の雇い入れや離職があった場合に、事業所を管轄するハローワークへ提出する必要があります。提出方法は、窓口での紙による提出と、オンラインでの電子申請の2種類です。
まず、雇用保険の被保険者となる外国人の場合は、雇い入れ時に「雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)」を、離職時に「雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号)」を提出することで、自動的に外国人雇用状況の届出も行ったことになります。この場合、届出期限は、雇い入れの翌月10日まで、離職した日から起算して10日以内と定められています。
一方、雇用保険の対象とならない外国人については、「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」を別途作成し、提出しなければなりません。提出期限は、雇い入れ、離職のいずれの場合でも、その翌月末日までとなっています。
電子申請を利用する場合は、雇用保険加入者に関しては政府の「e-Gov」システムを、非加入者については「外国人雇用状況届出システム」を通じて申請が可能です。ただし、電子申請を利用するためには、過去に外国人雇用状況の届出を行ったことがあり、かつ電子届出への切替申請を済ませている必要があります。
届出は、外国人労働者一人ひとりについて正確に行う必要があります。特に在留資格や雇用形態の違いによって提出書類や方法が変わるため、制度内容を正しく理解した上で、漏れなく対応することが重要です。適切な期限内に届出を行うことで、罰則のリスクを回避し、健全な雇用管理につなげることができます。
外国人労働者を雇用する際の注意点
外国人労働者を雇用するにあたっては、届出書の提出だけでなく、事前に確認すべき事項や雇用後の対応においても数多くの注意点があります。
- 在留資格の確認と不法就労の防止
- 雇用形態(正社員・パート・アルバイト)にかかわらず届出が必要
- 労働条件の明示・雇用契約書の締結
- 日本語能力と適切な配置の重要性
ここでは、これら4つの観点から、外国人雇用における実務上のポイントを解説します。どれも法令遵守やトラブル防止のために欠かせない事項であり、正確な理解と準備をもって対応することが、外国人労働者との信頼関係を築き、安定した雇用環境を整えるための第一歩となります。
在留資格の確認と不法就労の防止
外国人を雇用する際には、その人物が就労可能な在留資格を有しているかどうかを必ず確認する必要があります。在留資格によって認められている就労内容や職種には制限があるため、事業内容と外国人の資格が一致していなければ、違法な就労となってしまうおそれがあります。たとえ本人が働きたいと希望していても、在留資格に基づく活動範囲を超えて就労させた場合、事業主側が「不法就労助長罪」に問われる可能性があるので注意しましょう。これを防ぐためには、雇用前に在留カードやパスポートを確認し、必要であれば専門機関に確認を取るといった対応が不可欠です。
雇用形態(正社員・パート・アルバイト)にかかわらず届出が必要
外国人雇用状況届出書の提出は、雇用形態を問わず義務付けられています。正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイト、短期契約社員など、どのような雇用形態であっても、外国人であれば届出の対象になります。特に、短時間労働であっても外国人労働者を採用した場合は、雇用保険への加入有無に応じた届出書類の提出が必要です。雇用期間の長さや労働時間の多寡にかかわらず、雇い入れた事実や離職した事実があれば、期限内に確実に届け出ましょう。
労働条件の明示・雇用契約書の締結
日本人を雇用する場合と同様に、外国人労働者に対しても労働条件を明確に伝え、雇用契約書を交わすことが望ましいとされています。労働条件通知書に記載すべき内容は法律で定められており、労働時間や休日、賃金の支払い方法、契約期間など、あらかじめ明示しなければなりません。外国人労働者との間では、言語や文化の違いによって認識のずれが起こることもあるため、契約書を読み合わせたり、必要に応じて母国語による説明資料を用意するなど、丁寧な対応が求められます。
日本語能力と適切な配置の重要性
外国人労働者の日本語スキルには個人差があり、ビジネス会話がスムーズにできる人もいれば、基本的な会話にも不安が残る人もいます。そのため、業務内容に応じた日本語能力の把握が必要不可欠です。例えば、安全管理が求められる現場や顧客対応を含む業務では、ある程度の語学力が必要になる場合があります。一方で、専門スキルや経験が高い外国人であれば、言語の壁を補って余りあるパフォーマンスを発揮するケースもあります。企業側は、日本語力だけにとらわれず、個々の特性や適性を見極め、長所を活かせる業務配置を行うことが重要です。
その他の必要手続きと労務管理のポイント
外国人労働者を雇用する際には、届出や契約だけでなく、各種の労務管理や社会保険の手続きも適切に行う必要があります。これらの手続きを怠ると、労働法違反や外国人とのトラブルにつながるリスクが高まります。
- 社会保険加入の基準と手続き
- 労働条件通知書の交付義務
- 外国人雇用で起こりやすいトラブルと対策
ここでは、外国人雇用に関して特に注意しておきたい労務管理の基本ポイントとして、社会保険の加入要件や労働条件通知書の交付義務、実際に起こりやすいトラブルとその予防策について見ていきましょう。
社会保険加入の基準と手続き
外国人であっても、一定の条件を満たす労働者は日本の社会保険制度に加入する義務があります。社会保険の対象となるのは、フルタイムの正社員だけでなく、週の所定労働時間が20時間以上、月額報酬が8.8万円以上、学生ではないという条件を満たすパート・アルバイト労働者も含まれます。
事業主には、これらの条件に該当する外国人を採用した場合、速やかに健康保険と厚生年金保険の加入手続きを行わなくてはなりません。加入の手続きは日本年金機構を通じて行い、保険証の交付や保険料の控除など、運用面にも継続的な配慮が求められます。
労働条件通知書の交付義務
外国人を雇用する場合でも、労働基準法に基づいて労働条件通知書を交付する義務があります。この通知書には、契約期間、就業場所、業務内容、労働時間、賃金、休日、退職に関する規定などを明示する必要があります。特に外国人労働者の場合、日本語の理解度に差があることを踏まえ、必要に応じて翻訳や口頭での補足説明を行うのが良いでしょう。また、契約更新の条件や無期転換ルールなど、有期契約者に特有の情報も明記し、双方が同じ認識を持ったうえで労働を開始できるようにすると、トラブルの回避に繋がります。
外国人雇用で起こりやすいトラブルと対策
外国人雇用においては、言語や文化の違いからくるコミュニケーションの齟齬や、契約内容に対する誤解が原因でトラブルが発生するケースが少なくありません。例えば、労働条件の認識の違い、残業代の支払い基準、就労可能な範囲を超えた業務命令などが問題になることがあります。
また、日本の雇用慣行に不慣れな外国人が、問題発生時に自ら申し出ることができず、問題が長期化・深刻化する例もあります。これらのトラブルを防ぐためには、雇用契約締結時に丁寧な説明を行うこと、業務中も定期的なフォローアップ面談を行うことが有効です。加えて、問題が生じた際にすぐに相談できる窓口や対応体制を整備しておくことで、迅速かつ円満な解決が期待できます。
まとめ|届出義務を守り、安定した外国人雇用を実現しよう
本記事では、外国人雇用状況届出書の概要や提出対象となる外国人の基準、提出方法・期限、そして雇用時に注意すべきポイントについて解説してきました。外国人を雇用する際には、届出義務を正しく理解し、在留資格や労働条件の確認、社会保険加入手続きなどを確実に行うことが重要です。制度を正しく活用し、企業として責任ある外国人雇用を実践していきましょう。