日本の難民受け入れの現状を解説!難民認定率が低い要因を紹介
介護外国人労働者 2024.12.21
世界には、紛争や迫害により故郷を離れて避難生活を余儀なくされている人々が多数存在します。これらの人々は「難民」として知られています。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の調査によると、難民の数は2024年5月時点で1億2,000万人に達しているほどです。その数は年々増加傾向にありますが、日本における難民認定率は国際的に見て非常に低く、受け入れに慎重な姿勢を維持しているのが現状です。
この記事では、日本における難民受け入れの実態や認定に関するデータについて詳しく解説します。
世界の難民受け入れ
難民とは、自国の紛争や迫害により他国に避難し、国際的保護を必要とする人たちのことを指します。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の調査によると、難民の数は2024年5月時点で1億2,000万人に達し、12年連続の増加となっているようです。特に、シリアやアフガニスタン、ウクライナなど自国内の勢力の衝突で戦争が起こる国では多くの難民が発生しています。年々難民の数は増加しており、これからも増加していくことが想定されています。
難民となった人々は避難先の国で認定を申請し、申請が通ればその国で過ごすことが可能となります。他国に定住できれば、避難生活を終えることができるでしょう。
ただし、難民認定の基準や受け入れ方針は国によって異なります。その結果、各国の難民受け入れ数には大きな開きがあります。そのなかでも日本は認定率が極めて低く、国際社会から批判の声も多くなっています。
日本の難民受け入れの現状
日本は難民受け入れ国の一つですが、他国と比較すると難民認定率が非常に低い状況にあります。ここでは、日本における難民受け入れの実態について詳しく説明していきます。
日本の難民認定率は約9%と低い
出入国在留管理庁が発表した「令和5年における難民認定者数等について」によると、難民認定申請者数は13,823人で、審査の結果在留を認めた外国人は1,310人でした。認定率に換算すると約9%です。
各国ごとに事情が異なるため単純な比較は難しいものの、この約9%という数字は他国と比べて非常に低い水準であることが指摘されています。
難民認定以外で在留を認めるケースも増えてきた
難民の認定数・認定率が低い日本ですが、それでも以前に比べて数値は増加傾向にあります。近年では「人道的な配慮を理由に在留を認める」といったケースも増えてきました。
通常、難民と認定されるのは、日本の出入国在留管理庁・法務大臣の審査に通過した場合です。しかし、申請が不認定となった場合でも、「人道的な配慮による在留許可」を付与されることがあります。本国の経済的な事情や戦争・紛争からの退避、日本での家族状況などが考慮され、「定住者」や「特定活動」などの在留資格を有することが可能となります。
令和5年に在留を認めた外国人の1,310人のうち、このケースで在留を認めた外国人は1,005人となっています。明確な判断基準は明らかにされていませんが、今後も拡大していく可能性が高いと考えられています。
『第三国定住』の制度も利用されている
日本では、2010年から『第三国定住』と呼ばれる制度を通して、受け入れを実施しています。この制度は、最初に保護を求めた国に滞在している難民を、受け入れを承諾した別の国へ移し、そこでの定住を支援するものです。多くの難民がいる国からほかの国に難民を移すことで、国際社会が責任を分担し合う仕組みと言えます。
コロナの時期は第三国定住による日本への受け入れは一時中断されましたが、2022年からは年2回の受け入れが行われるようになりました。以下が2022年以降の実績です。
前期 |
後期 |
|
2022年 |
6名 |
29名 |
2023年 |
21名 |
26名 |
2024年 |
29名 |
18名 |
※参照:第三国定住難民とは|アジア福祉教育財団 難民事業本部
第三国定住によって来日した難民は、入国後約6か月間の定住支援プログラムを実施します。日本語教育の支援や健康管理のサポート、就職支援などさまざまな支援を受け、日本で自立した生活を開始することを目指します。また、定住地へ転居後の約5年間は、徐々に日本社会に慣れる期間として継続的な支援がおこなわれます。
日本で難民認定率が低い理由
日本の難民認定数や認定率は、諸外国と比較すると少ないですが、それにはさまざまな要因が考えられます。ここでは、その主な要因を3つに分けて解説します。
難民に対する社会的理解の不足
戦争や紛争などを理由に自国を離れる難民は増え続けており、問題は年々深刻化しています。日本でも徐々に受け入れ人数が増えているとはいえ、まだまだ国内では難民に対する理解は低いといえるでしょう。
日本は世界的にみても治安の良い国です。そのため戦争・紛争に困らされることはなく、難民問題が日常の中で実感されにくい状況にあると考えられます。
難民の定義が狭い
難民条約では「難民」の定義が設けられており、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れる人々が難民として認められます。しかし、この条約は主に「迫害を受ける危険がある人」を念頭に置いているため、戦争や紛争から逃れてきた人々は必ずしも難民と認定されないことがあります。そのため日本の審査では、戦争・紛争から避難してきた人たちを難民と定めない場合があるのです。
また、迫害のおそれがある人の申請の場合も、その程度によっては認定されないことがあります。このように、難民として認定する際の基準が厳格であるため、申請を却下することが多くなっています。
出稼ぎ目的での申請を防ぐための対策
日本では以前、難民認定申請者に対して無条件で就労を許可していました。この措置が取られた結果、難民としての認定を求める人々の中には、避難が目的ではなく日本での労働を目的とする人が急増し、その問題が浮き彫りとなりました。
この状況を考慮し、2018年には就労許可には制限を設けました。難民に対する理解の不足や対応体制の未整備だけでなく、偽装難民の増加を防ぐための規制強化もその背景にあります。
日本全体で難民への理解を深めるには
本記事では、日本における難民受け入れの現状、認定率を解説しました。
現状、日本は難民認定率が低く、受け入れに対して慎重な立場を取っています。ただ、難民の受け入れは、外国人労働者の増加や国際社会からの信頼の向上など多くのメリットがあります。
日本は世界的にみても治安の良い国なので、難民問題を身近に感じることは難しいと思います。しかし少しでも関心を持って理解を深めれば、深刻な難民問題の解消のきっかけとなるかもしれません。日本全体で難民への理解を深めてみましょう。